「自力整体」で痛みがラクになる2つの理由

――ところで、なぜ「自力整体」で痛みがラクになるのでしょうか。

裕:理由は2つあります。

1つ目は、副交感神経が優位になるので「血液」の交通渋滞が解消されます。
2つ目は、経絡の流れがよくなるので「気」の交通渋滞が解消されます。

 少し詳しくお話しすると、現代医学と東洋医学の視点で説明する必要があるんですね。

 まずは現代医学の視点からお話しします。私たちの体は、交感神経が緊張すると血管が縮んでしまい、血液の流れが悪くなります。血液の流れが悪くなると、そこに発痛物質という痛みの元となる成分が発生。要するに、「血液の交通渋滞が起こっている場所に、痛みが出てくる」というわけです。

 そこで「自力整体」をおこなうと体がほぐれ、副交感神経が働き血管が緩む。すると血液の交通渋滞が解消され、末梢まで血液が流れるようになる。だから痛みが取れるんですね。

 次に、東洋医学の視点でお話しします。たとえば整形外科のお医者さんに診てもらうと、椎間板ヘルニアとか、変形性の膝の関節炎といった名称が付けられますよね。「これが痛みの原因である」というふうに。

 整形外科で痛みが治らないと、その人たちは、鍼灸院に行きます。鍼灸院に行くと、すぐに痛みがラクになる。椎間板ヘルニアや変形性の膝の関節炎は治っていないのに、痛みは消えている。

「痛み」というものは、別の原因があると考えるのが東洋医学なんですね。体の中には「経絡」という「気」の流れがあって、その流れに交通渋滞が起きて気が滞るから「痛む」と考えるわけです。ですから、「自力整体」ではそこを刺激して、気の交通渋滞を解消しながら、痛みを取りのぞいていくんですね。

――なるほど。「自力整体」は、病名の付いた症状を治すのではなく、痛みを取り除くのに役立つということですね。

裕:お医者さんから「様子を見ましょう」「気のせいですよ」と言われたけれど、いま痛みに苦しんでいる人は、たくさんいるわけです。そんな方に、「自力整体」はおすすめです。

――ところで、著書『すごい自力整体』には、健康や美しさの条件は、「あったかくて、柔らかい体」であると書かれていました。私は冷え性で体が硬いのでハッとしました。

真理恵:「あったかくて、柔らかい体」が、まさに「自力整体」が目指すゴールなんです。なぜなら、人の体は本来、あったかくて、柔らかいものですから。

裕:これに付け加えると、「流れている体」ということですね。先ほど説明した、交通渋滞を起こしていない体です。交通渋滞が長引けば「冷たくて硬い、滞る体」になってしまいますからね。極端に言えば、死に近い状態です。

 わかりやすく言うと、赤ちゃんみたいに、あったかくて、柔らかい体が一番いいわけです。

「いろいろ通ってるのに痛みやコリをぶりかえす人」を救う、整体プロの技とは?

――あったかくて、柔らかい体を取り戻すために、「自力整体」では何をおこないますか?

裕:「自力整体」は、関節を揺さぶったり、体重をかけて押したり、引っ張ったりして、鍼(ハリ)を打つような刺激を与えます。

 鍼灸治療では、重要な「ツボ」(*気の流れを改善するスイッチのような場所)は関節付近にあると考えます。もちろん「ツボ」はそれ以外の場所にもありますが、私は「痛み」のある患者さんには関節付近のツボを使っていました。

 なぜ、重要な「ツボ」は関節付近にあるのかというと、それは、「そこの経絡が渋滞を起こしやすいからなのでは?」というのが私の推測です。

 それならば、「鍼を打たなくても、関節を動かすことで渋滞を解消できるのではないか」「関節を動かすことであれば、治療家に頼らなくても自分でできるのではないか」というのが、「自力整体」考案の原点なのです。

――著書『すごい自力整体』でも、関節をゆらゆら・ゆさゆさと揺する動きが多いですね。言葉で表現されているので、わかりやすかったです。

裕:そうですね。だいたい整体師の治療というのは、相手の関節をつかんで、ゆらゆら・ゆさゆさ・ふりふりと揺さぶるわけですからね。そうやって、関節を治療しているわけです。

――そのプロがおこなう技法を、惜しみなく『すごい自力整体』で紹介していますね。

真理恵:痛みの解消のほかにも、コリや疲れもとれますし、眠りの質の改善にも役立ちますので、ぜひお試しください。

【次回に続く】

『すごい自力整体』では、この他にも、整体プロの技法を使って、コリや痛み、ゆがみを解消するワークを多数掲載しています。(★一部動画でもご視聴いただけます)