人生の質を高めたければ、心のホームプレイスを見つけ出して移住せよ

四角 不安を煽ったり、「未来に希望はない」っていう本が、どんどん増えてるじゃないですか。でも、周さんの著書は、現状の問題点を厳しく指摘しつつも、必ず希望を感じさせてくれる。僕はともすればネガティブな思考をしがちだったので救われたし、あきらめずに行動し続けようって勇気をもらえたんです。

山口 嬉しいです。

四角 具体的には、この呪いをどう解いていくのがいいと考えていますか?

山口 結局は、教養の問題だと思うんです。日本人って、ダラダラ会社にいる人が多いですけれど、じゃあ、仕事が好きなのかって言ったら、エンゲージメントも世界最低でしょ? 他にやりたいことを見つけられない人たちが、もう生(せい)を持て余している。他にやることがないから、ダラダラ会社にいるんですよね。

四角 なるほど、確かに。

山口 バートランド・ラッセルっていうイギリスの哲学者が『怠惰への讃歌』という本を出しているんですが、その中で「文明社会の最大の問題は働きすぎだ」と言っているんです

四角 おおーー!

【山口周×四角大輔】確実に人生が変わる超カンタンな方法

山口 彼が活躍したのは20世紀の初頭ですけれど、「いかに働かないかが全世界的な課題になる」と、今の四角さんと同じようなことを言ってるんですね。じゃあ、なんでみんな働くのか。ラッセルに言わせると、「教養がないから」だそうなんですよ。

四角 教養か、なるほど。

山口 で、ラッセルの指摘が面白くて。学校って、英語で「スクール(school)」じゃないですか。ギリシャ語の「スコレー(skhole)」が語源なんですけれど、「スコレー」のもともとの意味は、「暇」なんですよ。

四角 へえーっ。

山口 要は、暇を有意義に過ごすためには、教養が必要であると。文字が読めないと本は楽しめないし、絵を描くにしても、スポーツをするにしても、ある程度基礎的なものがないと楽しめない。

四角 周さんが著書のテーマにもされている、自由に生きるためのリベラルアーツですね。

山口 だから、長時間労働の問題に関して、みんな労働そのものに目を向けますが、本質的に目を向けなきゃいけないのは、人生のクオリティ。クオリティが上がれば自然に時短になると思うんですよね。そして、クリエイティビティも必要。

四角 ああ、いいこと言ってくれてます(笑)。

山口 楽しいことを、自ら作っていく。今の時代、「楽しいこと」を与えられすぎちゃってる側面もあると思うんです。でも、人生のクオリティを上げるには、自分にとって楽しいことを、作っていかないと。自分の人生をプロデュースするというか。

四角 まさに、人生をデザインする能力ですね。

山口 もし今の状況に閉塞感を覚えていて、現状を変えたいならば、手っ取り早いのは引っ越しだと思うんです。「場所を変えると人生変わる」と言うと、「じゃあ、どこに変えたらいい?」なんてフニャフニャ質問してくる人が絶対いるから、「でかい日本地図を買ってきて、ダーツを投げてね、当たった所へ引っ越せ」って言ったりする。

四角 (笑)それ、最高のアドバイスだな。

山口 もうそれで、もう確実に人生変わりますから。

四角 僕もね、同じようなことを言うんですよ、「人生の質を高めたければ、心のホームプレイスを見つけ出して移住せよ」って。

 人生のクオリティが上がると働き方が変わるし、仕事のパフォーマンスも跳ね上がります。僕が『超ミニマル主義』の続編で伝えたいのは、まさにそこなんですよ。

山口 おお、そうなんですね。

四角 実際に僕が、そうだったから。心身が健康になる場所に住み、暮らしを整えないと、いい仕事はできないと実感したからです。僕の人生のクオリティを上げてくれたのは、間違いなく自然の中で遊ぶことだったので、ニュージーランドの湖畔の森に引っ越したんです。

 周さんの言葉を借りると、釣りや登山という「リベラルアーツ=教養」のおかげで、僕は豊な人生を送ることができた。リベラルアーツに費やす時間を最大化するために、仕事を超効率化して超集中することで、超時短術を完成させられた。

山口 僕も葉山に引っ越してからのほうが、仕事のパフォーマンスがぐんと上がりました。東京って、よく情報過密なんて言うけど、実は逆で、東京って本当に情報がないと思うんです。基本的に人間が作ったものばかりだから、変化がないんですよね。

 でも葉山だと、たとえば大峰山という山があって、秋になると木々がどんどん色づいていって、変化するわけです。海にしても、日によって青だったり緑だったり、色も雰囲気も変わる。情報がどんどん変わって刺激になるんです。

四角 人工物には変化がないから情報が少ないと……納得です。変化し続ける自然から豊かな情報を授かって教養を深めるため、人生のパフォーマンスを上げるために、ぜひ思い切った「居場所シフト」に挑戦してほしいですね。

(対談 了)

*『超ミニマル主義』では、「手放し、効率化し、超集中」するための全技法を紹介しています。

【山口周×四角大輔】確実に人生が変わる超カンタンな方法四角大輔(よすみ・だいすけ)
執筆家・環境保護アンバサダー
1970年、大阪の外れで生まれ、自然児として育つ。91年、獨協大学英語科入学後、バックパッキング登山とバンライフの虜になる。95年、ひどい赤面症のままソニーミュージック入社。社会性も音楽知識もないダメ営業マンから、異端のプロデューサーになり、削ぎ落とす技法でミリオンヒット10回を記録。2010年、すべてをリセットしてニュージーランドに移住し、湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む。年の数ヵ月を移動生活に費やし、65ヵ国を訪れる。19年、約10年ぶりのリセットを敢行。CO2排出を省みて移動生活を中断。会社役員、プロデュース、連載など仕事の大半を手放し、自著の執筆、環境活動に専念する。21年、第一子誕生を受けて、ミニマル仕事術をさらに極め――週3日・午前中だけ働く――育児のための超時短ワークスタイルを実践。著書に、『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)、『人生やらなくていいリスト』(講談社)、『モバイルボヘミアン』(本田直之氏と共著、ライツ社)、『バックパッキング登山入門』(エイ出版社)など。