「心理的安全性」を気にしすぎて部下に舐められる上司の致命的な勘違い写真はイメージです Photo:PIXTA

「心理的安全性」という概念が広まりつつあります。部下の話をよく聞き、気持ちや考えを尊重することで、部下が安心して働けるようにとのことです。ただ、一方で、部下に気を使いすぎるあまり、明確な指示でビシバシと仕事を仕切っていた、かつての「ボス力」を失ってしまいそうだという上司の声も聞こえてきます。しかし、そう感じるのは、心理的安全性に対してある誤解があるからです。それを正すことで、上司として健全な「ボス力」を発揮し続けることはできるのです。(アークス&コーチング代表 櫻田 毅)

職場の心理的安全性を求められて
「ボス力」を失いつつある上司

 良好なチーム・マネジメントに必要な要素の一つとして、「心理的安全性」という概念が広まりつつあります。「心理的に安心して仕事ができる職場の空気」と捉える人が多く、部下の話をよく聞くこと、部下の考えを尊重すること、あなたは役に立っていると感謝の気持ちを伝えることなど、上司は部下に寄り添うマネジメントを求められます。

 ところが先日、ある企業のグループリーダーのAさんから、このようなことを言われました。

「心理的安全性と言われて部下の気持ちに配慮していると、自分の考えを強く言えなくなってしまうんです。かつては、明確な指示でビシバシと仕事を仕切ることで、部下も頼りにしてくれていたのですが。どうも、昔の『ボス力』を失っているような気がしてならないんです」

 実は、Aさんと同じように、部下に気を使いすぎるあまり、上司としての「ボス力」がなくなりつつあると感じている人は少なくありません。

 ただ、このように考える人の多くは、心理的安全性の本来の機能について大きな誤解をしています。それを正さない限り、Aさんのように悶々と悩み続けて、本当に「ボス力」を失ってしまう恐れがあります。

 では、正しく心理的安全性を機能させ、健全に「ボス力」を発揮し続けるためには、いったい何を理解しておくことが必要なのでしょうか?