「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
歯を失わなくても
認知症リスクを高める
【前回】からの続き 歯周病を起こす歯周病菌は、たとえ歯を失う原因にならなくても、アルツハイマー型認知症のリスクになるという話もあります(九州大学大学院の武洲准教授らの研究)。
歯周病菌は口のなかだけではなく、歯茎から体内に侵入して血液を介し、全身を巡っています。そして、炎症を引き起こす物質をたくさんつくり出します。
異常たんぱく質が
脳内に入り込んでしまう!
体内の免疫細胞は、この炎症を抑えようとしますが、歯周病菌に過剰に刺激され続けると、アルツハイマー型認知症を招くアミロイドβ(異常たんぱく質)をつくり出すようになります。
これまで体内でつくられたアミロイドβは、「血液脳関門」(血液中から脳組織への物質の移行を防ぐしくみ)で止められて、脳内には入ってこないと考えられてきました。ところが、最近ではアミロイドβが血液脳関門をすり抜けて、脳内に入り込んでしまうことがわかっているのです。
歯周病菌が
記憶力の低下を招く
マウスの実験では、歯周病菌を接種された中年のマウスでは、脳内でアミロイドβがおよそ10倍に増えて記憶力の低下が起こったそうです。
また、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳で、歯周病菌がつくる炎症物質が見つかり、それによりアミロイドβの産生・蓄積が起こることもわかってきました。 【次回に続く】
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)