後悔しない「歯科治療」#15Photo:Photolibrary

歯周病と糖尿病や認知症などの全身疾患との関連が注目されている。研究が重ねられ、エビデンス(科学的根拠)が蓄積されつつあるところだ。特集『決定版 後悔しない「歯科治療」』(全23回)の#15では、「歯と全身の健康」の関係が今、どこまで分かってきているのか。現在位置を冷静に確認しておこう。(医学ライター 井手ゆきえ)

関係が明らかなのは糖尿病
歯周病から糖尿病が発覚した例も

 近年、糖尿病や認知症などの全身疾患と、歯肉炎、歯周炎に伴う口腔内の持続的な感染との関連が注目されている。確かに毎日の歯磨き+アルファであらゆる全身疾患を予防し、健康寿命が延びるとなれば夢のような話だ。ただし、先走ってはいけない。現時点では因果関係というより、双方向に悪化のリスクになり得るという相互関係が見えてきた段階だ。

「歯周病との相互関係が明らかなのは糖尿病でしょう。実際、歯周病は糖尿病の五大合併症(網膜症、腎症、神経障害、足病変、大血管症)に続く6番目の合併症といわれています」と解説するのは、ティーズデンタルオフィス駒沢(東京都世田谷区)の濱田泰治院長だ。

 糖尿病が歯周病を悪化させるメカニズムには、高血糖による脱水症状で口の中が乾き、唾液の自浄作用が低下する、歯周病の病原菌に対する抵抗力の低下などがある。米国の研究によると糖尿病患者の歯周病リスクは非糖尿病の健康な人の2.6倍にもなり、他の研究でも過去、1、2カ月の血糖値を反映する糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5~7.0%あたりから歯周病が悪化するリスクが上昇し始め、9.0%以上で歯周病の悪化リスクが2.9倍に跳ね上がる。

「当院の患者さんで年齢の割に歯周病が進行していたため、生活習慣を問診した上で血糖値の検査を勧めた結果、2型糖尿病が見つかった方もいます」。歯科医にマメに通っていれば「糖尿病の早期発見」なんてメリットもあるかもしれない。

 歯周病の治療で血糖値が改善することも分かってきた。ざっくりまとめると、歯周病をきちんと治療した後はHbA1cが改善され、しかも、その効果は数カ月先まで続く。『糖尿病診療ガイドライン2019』(日本糖尿病学会編・著)でも歯周病に一章を割き、糖尿病が歯周病を悪化させる要因であると同時に、「歯周治療」が血糖コントロールの改善に有効であるとして歯周病の治療を推奨している。

 では認知症と歯周病の関係はどこまで分かっているのか、見てみよう。