職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

感じのいい上司は「後輩から重たい相談されたとき」に、何を手渡すのか?Photo: Adobe Stock

空気を和ませる
「スウェーデン」の教え

「相談があるんですけど……」と、元気のない後輩が、神妙な面持ちで声をかけてきたとしましょう。

 一瞬、身構えたものの、意を決してタブレットと筆記用語を持って会議室へ。後輩は深刻そうな顔をしている。

 そんな凍り付いた空気を入れ換える、誰にでも簡単にできる「気づかい」をお伝えしましょう。

「FIKA」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

 朝の10時と午後の3時になると、コーヒーと甘いものを持って、職場の仲間と会話を楽しむというスウェーデンの慣習です。

 言葉の由来は、スウェーデン語の「コーヒー」をひっくり返したものだそうです。コーヒーと甘いものには、その場の空気を和やかにする効果があります。「FIKAタイム」には、役職の垣根も取り払われるといいます。

「ここぞ」というときに会議室に持ち込むものは?

 私はスウェーデンには行ったことはありませんが、「FIKA」という文化に大きく興味を持ちました。
 それ以降、込み合った展開になりそうな打ち合わせには、「空気を和やかにする」というFIKA効果を借りて、「甘いものを持参する」ということを実践するようにしました。

 日本では、大袈裟にケーキを用意しなくても「コンビニのキャンディー」程度でじゅうぶんだと思います。少し特別感のある「カルディのキャンディー」などもおすすめです。いわゆる「飴ちゃん効果」ですね。

 そして、会議や面談で空気が悪くなりかけたときに、キャンディーを差し出します。
 明確に空気が和やかになるのを感じます。

 これを言うと、「それは女性だからできるんでしょ?」と思われるかもしれませんが、私の経験上、性別は関係ありません
 むしろ、普段お菓子と縁がなさそうな男性が手渡す威力は絶大です

 気をつかいすぎる人は、オシャレで高価なお菓子を用意してしまいます。大きなイベントであればそれでもいいでしょうが、あまりに頑張りすぎると「お返ししなければ」と相手に気をつかわせてしまいます。相手の心の壁に入り込んでしまうので、そこまで張り切る必要はありません。

 また、もし「退職」や「人間関係の相談」で呼び出されたときは、キャンディーにプラスして、「ポケットティッシュ」を念のため持っていければ完璧です。

 これは私の失敗談ですが、目の前で泣き始めてしまった後輩を見かねて、会議室にあったアルコールティッシュを差し出すしかなかったことがありました……。
 それ以降、「これは重大な相談だな?」というときにはポケットティッシュを持っていくようにしました。みなさんもぜひ、参考にしてみてください。