第一生命Photo by Yasuo Katatae

新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は第一生命ホールディングス、かんぽ生命保険、T&Dホールディングスの「生命保険」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

生保3社はそろって増収も
利益面は「減益ラッシュ」

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の生命保険業界の3社。対象期間は22年8~12月の四半期(3社いずれも22年10~12月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・第一生命ホールディングス
 増収率:16.8%(四半期の経常収益2兆2292億円)
・かんぽ生命保険
 増収率:0.04%(四半期の経常収益1兆5956億円)
・T&Dホールディングス
 増収率:7.9%(四半期の経常収益6239億円)

 生命保険業界の3社は、いずれも増収となった。中でも、第一生命ホールディングスは2桁増収と好調である。

 かんぽ生命保険は四半期増収率が0.1%未満と突出して低いが、かろうじて増収を死守。業績悪化底打ちの兆しを見せた。

 というのも、同社はかつて、不祥事の影響で13四半期連続の減収に陥っていた。直前の四半期(22年7~9月期)に14四半期ぶりの増収に転じ、長いトンネルを抜けつつある段階だ。

 かんぽ生命保険が長期的な不振に陥っていた背景には、19年に発覚した「保険の不適切販売問題」がある。同社では不祥事の「みそぎ」として同年7月から約2年弱にわたって営業活動を自粛し、21年4月から本格的に再開した。だが、不適切販売に手を染めた代償は重く、営業再開後も増収に転じるまでに1年以上を要した。

 生保業界の決算に話を戻すと、残るT&Dホールディングスも増収で着地したことから、生保3社の業績はいずれも堅調のように思える。

 ところが、各社の利益面(第3四半期累計)に目を向けると、全く異なる様相が見えてくる。

 第一生命ホールディングスの経常利益は前年同期から36.0%減、最終利益は前年同期から同50.7%減と大幅減益に陥っている。

 かんぽ生命保険の経常利益は同70.8%減、最終利益は同36.2%減と、こちらも大幅減益だ。

 T&Dホールディングスに至っては、経常損益が1210億円の赤字、最終損益が1676億円の赤字に転落している。

 増収率だけを見ると好調そうに見える3社は、なぜそろって大減益となってしまったのか。次ページでは、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、3社の減益要因について解説する。