日本とアメリカの国旗写真はイメージです Photo:PIXTA

1990年までアメリカに追い付き追い抜く勢いのあった日本の経済成長率が低下し、現在では追い付くどころか差を広げられている。なぜこのようなことになったのか。戦前から現在までのアメリカ経済を含む世界経済の動向をひもとくと、その理由が見えてきた。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

アメリカ経済との比較で見えてくる
日本経済停滞の本当の理由

 日本が停滞しているといわれる。それがどういう意味かといえば、1990年までアメリカに順調に追い付き追い抜く勢いのあった日本の経済成長率が低下し、追い付くどころか差を広げられているという意味である。なぜこんなことになったのかと多くの人が議論しているが、戦前にもそういう時代があった。それについて考えることは、現在の停滞についても多くのヒントを得られるだろう。

 まず、戦前からの1人当たり購買力平価GDPのデータが必要である。データはオランダ・フローニンゲン大学のマディソン・プロジェクト(Maddison Project Database 〈MPD〉 2020)が提供している。このデータについては細かなことを言えばさまざまな批判があるだろうが、紀元1年から現在まで143カ国のGDPデータを整理したものは他にはない。そこで、このデータを大略正しいものとして議論しよう。

 図は1800年からのアメリカを1とした1人当たり購買力平価GDPの推移を示したものである。アメリカは水色で当然ながら常に1である。この図の右側を見ると、1990年までアメリカとの差を縮めていた赤の日本が、その後停滞しアメリカとの差は拡大し、2000年以降、遅れながらもその差をなんとか維持している状況にあることが分かる。日本の停滞が目立っているが、オレンジのドイツを除いては他の先進国も停滞し、茶色のイタリアは日本以上に停滞していることも分かる。

 この図から、日本経済の停滞の理由が浮かび上がってくる。詳しく解説していこう。