貧国ニッポン#7Photo by Satoshi Okada

かつて貿易で世界を席巻した日本だが、2022年に進んだ円安は国民生活をむしばみ始めている。日本は世界最大の「対外純資産国」の地位を失い、過去にため込んだ資産を食いつぶして生きていくしかないのだろうか!?特集『貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛』(全13回)の#7では、12月下旬に日本銀行が唐突に打ち出した事実上の利上げの狙いに加え、円安を定着させかねない構造要因を、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

日米金利差だけでは説明できない
説明されない円「全面安」の要因は?

――2022年は円相場が一時、150円を上回る記録的な円安に振れました。唐鎌さんは日米金利差以外にも構造的な要因があると指摘しています。

 一般的な説明では、米国がインフレ対策として急激な利上げをしたため、日本との金利差拡大によって円安になったとされています。

 それはつまり、今回の円安はドル高の裏返しによって生じたという見方です。米国連邦準備制度理事会(FRB)が今後、利上げをやめて米国の金利が下がれば、円安は終わるという見方です。このような説明は今でも多いと思います。

 それは間違いではないし、そういう一面があったのは事実です。しかし、金利差だけで約40円も円が弱まるような、1985年の「プラザ合意」以降の記録的な円安が起きるでしょうか?

 つまり、ドルの全面高と円の全面安という二つの要素が併発したことが記録的な円安を引き起こしたということです。

 22年11月に入って円相場は1ドル130~140円台となりましたが、これはドルの全面高の要素が弱まったからであり、円の全面安の要素はいまだ残っていると考えます。

――円の全面安を引き起こした原因とは何でしょうか。

異次元金融緩和が始まった2013年当時から、そのデメリットについて警鐘を鳴らしてきた唐鎌氏。次ページでは、唐鎌氏が岸田政権の経済運営について、「何をしたいのか分からない」と批判しつつ、アベノミクスは恩恵が広く国民に行き渡らず「失敗に終わった」と断じる。日本銀行による唐突な長期金利の変動幅の見直しで、果たして山積する問題を解決できるのか。また、目先の為替相場にとらわれず、超円安を生み出した日本経済が抱える構造要因に加え、そのマイナス影響についても議論は及ぶ。ぜひ耳を傾けたい。