総予測2023#71Photo by Masato Kato

「知の巨人」と評され、昨今その言説が注目されるのがフランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏だ。特集『総予測2023』の本稿では、「第3次世界大戦は既に始まっている」と訴えるトッド氏を直撃。旧ソ連崩壊やトランプ米大統領誕生などを言い当ててきた“予言者”として知られるトッド氏は、「未来の歴史書の最終章で語られることは『米国システムの崩壊』ではないか」という衝撃の“未来像”を描き出した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

ロシアウクライナ戦争はむしろ
西側諸国の存亡を賭した戦いだ

――世界が歴史的な転換期を迎え、「第3次世界大戦は既に始まっている」との言説を展開しています。この背景や真意はどこにあるのでしょうか。

 目下の事態が「世界大戦」といえる状態にまで発展した理由は、経済的な側面が大きいと考えます。ロシアはウクライナ侵攻において、その面で決して失敗を犯していません。何しろ、欧米による経済制裁は、ロシア経済のレジリエンス(強靱性)を示した一方、欧米経済の弱さを露呈したにすぎませんでした。

Emmanuel ToddEmmanuel Todd/歴史人口学者・家族人類学者。1951年フランス生まれ。パリ政治学院卒。英ケンブリッジ大学で博士号を取得。旧ソ連崩壊やトランプ米大統領誕生などを次々と言い当ててきた。近著に『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文藝春秋)。 Photo by M.K.

 私からすると、今、生き残りを賭して奮闘しているのは、ロシアよりむしろ西側諸国にほかなりません。米国にとっても、この戦争は存亡を巡る戦いへ変貌を遂げつつあります。

 トッド氏が「第3次世界大戦は既に始まっている」と考える真意とは?さらに、旧ソ連崩壊やトランプ米大統領誕生を言い当ててきた“予言者”としても知られる同氏が「未来の歴史書の最終章で語られることは『米国システムの崩壊』ではないか」と話す理由、世界における日本の「優位性とすぐに取り組むべき課題」、「西側諸国の中で唯一、生存戦略が機能している」と名指しした国家、次ページではこれらを大公開する。