日本マクドナルドが今年1月、過去1年間で3度目となる値上げを発表。約8割の商品の価格を10~150円引き上げた。価格戦略の専門家である筆者は、対象商品の多さと値上げ幅の大きさから、今回の値上げは単なる「原材料高・円安対策」にとどまらない印象を受けた。もちろんマクドナルドは本音を明かしていないので、独自の調査を通じてマクドナルドの意図を読み解いていこう。(プライシングスタジオ代表取締役 高橋嘉尋)
この1年で実に3度目
最大150円アップの大胆値上げ
2023年1月、日本マクドナルド(以下、マクドナルド)が商品の値上げを発表した。この1年間で3度目の値上げということもあり、そのニュースは瞬く間に世間を駆け巡った。報道やSNSを通じて、原材料高を憂う声、値上げを残念がる声、それでもまだマクドナルドの相対的な安さを評価する声など、さまざまな消費者の意見が聞こえてくる。
今回のマクドナルドの値上げは、単品・セットメニュー問わず、約8割の商品を対象に、価格を「10円から150円引き上げる」というもの。筆者はその値上げの性質に、過去2回の値上げとは異なる印象を受けた。
例えば、1回目となる22年3月の値上げ。このときに値上げの対象となったのは商品全体の2割にとどまり、値上げ幅も最大で20円アップだった。
2回目の9月の値上げでは、対象は商品全体の6割まで広がったものの、それでも値上げ幅は最大30円。また、いずれの値上げ発表でも、除外商品を強調するなど消費者の痛みに配慮した印象がうかがえた。
それに続く今回の値上げ。対象商品の多さと値上げ幅から、その大胆さを感じ取っていただけるのではないだろうか。
マクドナルドは値上げの要因として上昇するコストや為替変動を挙げており、これは3回の値上げで共通している。言うまでもないが、国内外問わず原材料やエネルギーコストの高騰は歯止めがかからない状況が続いている。多くの企業が商品を値上げする最大要因と言えるだろう。
マクドナルドの場合は、それに加えて急激な円安も大きな痛手だ。グローバルな調達力が最大の競争力であったがゆえに、そのダメージはかなりのものだと推測される。
そうしたコスト上昇や為替変動の吸収が追いつかず、3回目の値上げに踏み切ったマクドナルド。その大胆にも思える価格設定を、プライシングの視点で分析してみよう。