時代が変化する中でビジネスの定義を誤り、それを前提に戦略を組み上げたことによって破滅的な結果を迎えた企業の例は、枚挙にいとまがありません。

 ビジネスを正しく定義できるか、環境の変化に応じて正しく再定義することができるかは、その企業の生死を分ける重要なポイントだと言えるでしょう。

スキー場であっても
「スキー場ビジネス」ではない

 では、私たち白馬岩岳のビジネスの定義は何か。コダックの話をしながら、ようやっと火が通ってきたホルモンを口にしつつ、議論は進みます。

 過去30年間で市場が3分の1になり、これから人口減少にともなってさらに市場が小さくなることが見えている国内スキー場ビジネス。これまでと同じ土俵で、同じような相手と組み合っていても、気づいたら誰もその相撲を見てくれなくなるのではないか。

 私たちが持っている資産はスキー場としてのリフトやゲレンデだけではなく、ほかにもっと活用できるものがあるのではないか。

 こうした思いから話し合って出てきた結論が、「私たちはスキー場ビジネスをやっているわけではない」ということでした。

 私たちがいる土俵は「レジャー産業」です。もう少し具体的な言葉で言うと、次のようになります。

「半日程度以上の時間を国内外のお客さんに使ってもらい、目に見える製品や商品をお渡しすることなく、満足感や爽快感を覚えてリフレッシュした状態で、もとの生活に戻ってもらうビジネス」

 そう考えれば、競合は県内スキー場だけではありません。同じスキー場でもニセコや蔵王など、北海道や東北にあるスキー場も明確に含まれます。さらには北アメリカやヨーロッパのスキー場も明確な競合としてとらえなければいけません。

 そしてもちろん、スキー場だけではなく、遊園地やキャンプ場、ゴルフ場、映画館、動物園や水族館といった施設も競合です。京都、沖縄などの観光地もライバルととらえる必要があるでしょう。

 有形な施設を持つものだけではなく、ゲームやスマホ、インターネットなどですら、考えようによってはお客さんの時間と財布を取り合う競合だということになります。