(2)ノウハウ
「隠れた資産」は、なにも「モノ」だけとはかぎりません。既存ビジネスを通じて蓄積された社内のケイパビリティ(能力、ノウハウ)も「隠れた資産」の1つです。

 白馬で一緒に事業を展開してくれている国内トップのアウトドア総合メーカーであるスノーピークは、キャンプ場運営事業も展開しています。これもまた、わかりやすい「既存ビジネスで得られたノウハウの活用」と言えるでしょう。

 このように、本業以外の分野への進出を考える際に、「既存のビジネスで得られたケイパビリティという隠れた資産」を活用することは、成功の秘訣の1つになります。

(3)ヒト(お客さん、ファン)
 これまでのビジネスを通じてつちかってきた「お客さんとの接点や、応援してくれるファン」も、魅力的な「隠れた資産」の1つです。

 トヨタなどの自動車メーカーが進める金融事業は、その代表でしょう。ディーラーで車を購入するというタッチポイントを活かし、購入者にクレジット販売を行ったり、保険商品を販売したりする事業です。

 2021年3月期にはトヨタグループ全体の営業利益2兆2000億円のうち、約5000億円が金融事業由来の利益でした。いまや利益全体の20%以上を占める重要なビジネスに発展しています。

 ここ10年ほどでどんどん充実してきているecuteなどのJRのエキナカビジネスについても、「ヒト」という隠れた資産に目をつけ、「しっかり買い物をしてもらえる場所」に磨き上げた良い例です。

 スノーピークのように、熱烈なファンを数多く抱え、商品開発や情報発信にファンが大きな役割を果たしている例も「ヒトという隠れた資産の活用」と言えます。

 スノーピークの場合は、すでに「隠れた」とは言えないくらい有名な資産活用の例になっています。しかし普通の会社や地域であれば、そのファンを活用しきれていないケースがほとんどではないでしょうか。

 もちろん、上記のモノ、ノウハウ、ヒトといった「隠れた資産」を複合的に組み合わせて成功に導いているケースも少なくありません。