「マンション高騰だから賃貸」の落とし穴、家賃“値上げラッシュ”に現実味写真はイメージです Photo:PIXTA

新築マンション価格の高騰が進み、供給戸数も減っている。ファミリー層の中には「持ち家は高いし、賃貸のままで十分だ」と思っている人が多いかもしれない。だが、これからマンション購入者が減っていくと、賃貸物件で家賃の“値上げラッシュ”が起きるかもしれない。「あのときに物件を買っていればよかった」と後悔したくない人に向けて、家賃の上昇が見込まれる理由と持ち家のメリットをお伝えする。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)

マンションの平均価格が上がると
供給戸数は減る

 2022年は、首都圏における新築分譲マンションの供給戸数が3万戸を割り込んだ(不動産経済研究所調べ)。その最大の理由は価格の高騰だ。

 マンションの平均価格が上がると、供給戸数が減る。資金面のハードルが上がり、購入できる人も減るからだ。このため、首都圏の「平均価格×供給戸数」で算出される金額は、10年以上2兆円付近で推移している。

 一般消費者は、この金額の先行きが読めれば、将来の供給戸数も想定できるようになる。そこから「どの価格帯の物件を買うか」というファミリーの自宅戦略が決まってくる。

 まず、マンション価格は金融緩和と連動して上昇することを知っておこう。逆に、金融が引き締められるか、不動産デベロッパーにお金が流れなくなると、価格は下がる。

 不動産は価格が高いので、消費者が手元の現金で購入することはなく、必ずと言っていいほど借り入れを行う。

 自宅を買う場合は住宅ローンを借りるのが一般的だが、時には金融引き締めによって「借りられない」という事態も起きる。そうなると、マンション価格は下がるしかない。

 過去に本連載でも紹介した通り、不動産価格の値上がりが続いていたバブル経済下の1990年、当時の大蔵省は「総量規制」と呼ばれる行政指導を行った。

 総量規制とは、金融機関による過剰な不動産融資に規制をかける施策だ。この行政指導が行われるやいなや、不動産デベロッパーに資金が流れなくなり、高騰していた不動産価格は急落に転じた。

 当時のように、金融機関の不動産向け融資に規制がかかると、不動産価格が上がることはなくなる。