コスト削減効果よりも価値創造効果が注目される
全ての新規採用が想定どおりの結果につながるわけではないことと同様に、全ての再雇用が想定どおりにいくわけではありません。ただし、退職者の特徴や、再入社後に結果が出るケースとその要因を知ることで、会社も社員も、そして、再入社者本人も幸せになる事例を生むことができるはずです。
再雇用・再入社の企業側の一番のメリットとして多くの人に認識されているのは、人材紹介会社などを利用する場合に比べると採用コストが低く抑えられたり、新規採用者に比べると教育期間やコストが抑えられたりすることではないでしょうか。最近では、人材紹介の成果報酬は理論年収の35%から(職種によっては)100%というのが相場になっています。それに教育コストも加えると、1名の再雇用あたり数百万円から1000万円以上のコスト削減効果があると考えられています。また、一方で、退職者の再雇用が一般的になるにつれて、再入社がもたらすイノベーションなど、コスト削減効果よりも価値創造効果に注目する企業が増えてきています。
新卒入社のプロパー社員や新規中途採用者と比較して、自社の退職者の特徴と言えるのは、社外環境や他社事情をよく知っているうえで、自社のことも知っている「ウチ」と「ソト」の中間にいる貴重な存在ということです。イノベーションにおいて重要とされる「両利き(Ambidexterity)の経営」にとっても重要な人材になり得ます。
例えば、一度は「ソト」に出た退職者が再入社というかたちで「ウチ」に戻ってくると、「知の探索(Exploration)」力を発揮して、外部で得た新たな知見や経験を持ち込むことができます。それをイノベーションに繋げるために重要なのが、“元”退職者である再入社者と、受け入れ側である社員側の双方の理解です。再入社者だけに限った話ではありませんが、どちらも「ウチ」や「ソト」の常識や慣習を主張するだけでなく、アンラーニングも行いながらお互いの違いを受け入れて、融合を考え、進めることが重要です。再入社者が「ウチ」や「ソト」の両方の常識や慣習を知る人材であることがここで生きてきます。「ウチ以外ではこのやり方が一般的なのでこれで進めたい。なぜ、できないんだ?」と一方的に押し付けても進まないものが、「部署全体でいきなり導入するのは難しそうだけれど、まずはスモールスタートしてみて、リスクがないことがわかったら全体展開するのはどうか?」など、組織文化に合ったコミュニケーションにするだけで一気に進みやすくなることはよくある話です。