再雇用は採用候補者や他の退職者にも好影響を与える
再入社者が「入社前から社内の仕組みなどを知っている」という点は、早期戦力化や採用ミスマッチの予防などにも繋がります。事業や業務理解の高さだけではなく、過去に在籍していた時からの「Know Who」やカルチャー理解は再入社後のスムーズなスタートを可能にしますし、お互いの期待値のずれが低いために「こんなはずじゃなかった」というミスマッチも防ぎやすくなります。そのうえで、在籍していなかった期間に会社側にも再入社者側にも変化があったことを認識し、再入社者と社員の双方が「かつて在籍していたのだから、(再入社者は)全てをわかっているはず」と考えずに、適切な入社オンボーディング期間を設けることが重要です。その“オンボーディング”も、新規入社者に比べると大幅にシンプル化できますが、特に離職期間中に変化したことにフォーカスしたオンボーディングを実施すると効果的です。筆者とお付き合いがある企業人事の方の声に、「退職者の再入社受け入れは、社外出向者の復帰時に似ている部分がある」というものが増えています。“出向”中の会社の変化を伝えるだけでなく、“出向”中の個人の変化を会社も理解することが復帰後の成功に大きく影響します。
また、エンゲージメントを高めるという視点においては、再入社した人の声を採用候補者や他の退職者、そして、現社員に届けることも効果的です。再入社者が「社外で挑戦してから再度戻りたくなった理由」を知ることで、採用候補者や他の退職者は社外からは見えない会社の環境や変化を知ることができますし、現社員は他社と比較した自社の良さや変化を再認識することができます。再入社者の声をインタビュー記事などの形で、採用ページなどで社外公開している会社もありますが、それはハードルが高過ぎるという場合は、まずは、社員向けや退職者専用のアルムナイコミュニティなどのプライベートな環境のみでスタートするもの良いかもしれません。
筆者が経営する会社では、アルムナイ専用のクラウドシステム『Official-Alumni.com(オフィシャル・アルムナイ・ドットコム)*2 』の提供を行い、企業と退職したアルムナイとの関係構築を支援しています。アルムナイという言葉をサービス名にも使っていることから、「アルムナイなんて横文字を使わずに再雇用・再入社と言え」「社友会や再雇用は昔から存在するから何も新しいことではない」と言われることがあります。「アルムナイ」は退職者の再雇用だけを意味するわけではなく、また、何でも横文字を使うことが良いとは思っていません。しかし、新しい言葉の普及は、「退職者」や「出戻り社員」といった言葉に根付いてしまったネガティブなイメージを払拭することができます。それによって、退職者の再雇用など、「アルムナイとのつながり」がもたらすポジティブな影響に目を向けることができるのではないでしょうか。
*2 Official-Alumni.comは、ハッカズークが提供するアルムナイ専用クラウドシステム。企業が効率よく運用できる管理機能に加えて、登録するアルムナイのメリットとなるアルムナイ同士のチャットや名簿検索、さまざまな募集ができる機能などが簡単に利用できるツールになっている。