2016年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの奇跡』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。
「育てない」ことこそが、最良の子育て
未成年者の犯罪が起きると、評論家の方たちは、「親は、もっと子どもと向き合ったほうがいい」と言います。
しかし、親は子どもに背を向けて、向き合わないほうがよいのではないか、と私は思います。
子どもと向き合い、目の前に大人が立ちふさがっていたら、子どもは「そこを、どいてほしい」と思うだけです。
それよりも、親は子どもに「背中」を見せて、ズンズン前に進んでいくほうがいい。
「こうしなさい」「そこがダメ」と向き合って、指摘し続ける親ではなく、「あなたがどうなっても支え続ける」「あなたはあなたのままでいい」と「見守る親」のほうが、親にも子どもにも「ラク」です。
親が子どもと向き合って、関わり過ぎるほど、子どもの芽を摘んでいくような気がします。
私の子育て論は、「逆リア王的子育て論」です。シェイクスピアの悲劇「リア王」の反対バージョンです。
親に忠誠を口にする子どもには厚い待遇をするけれど、耳ざわりな言葉を発する子どもは縁切り、というのが「リア王」のストーリーでした。その反対です。
子どもがどのように育とうとも、親は、いつでも助けてあげる。ボロボロになって帰ってきたとしても、「いつでも、あなたはここに帰ってきていいんだよ」と言ってあげるのです。
「なんでもかんでも受け入れて甘やかしていたら、きちんとした人間にならないのではないか」と思う親がいるかもしれません。
でも子どもは、どんなときでも自分を受け入れてくれた親を、「悲しませよう」とは思わないでしょう。
「子どもが助け船を求めてきたら、いつでも助け船になってあげる」という覚悟がある親のもとでは、子どもはあまり踏みはずさないのではないでしょうか。
困っているときには、無条件で受け入れる。それが小林正観流の「子育てしない子育て論」です。
私たちは、小学校・中学校・高校・大学を通して「思いを持って、目標を立てて、努力することが人生であり、それをしないと落ちこぼれる」とさんざん教わってきました。
「『ダメな子』とか『わるい子』なんて子どもは、ひとりだっていないのです。もし、そんなレッテルのついた子どもがいるとしたら、それはもう、その子たちをそんなふうに見ることしかできない大人たちの精神が貧しいのだ」
この言葉は、漫画家の手塚治虫さんが、著書『ガラスの地球を救え』(光文社)の中で、子どもと向き合う親の精神性について述べた言葉です。
子どもの欠点を指摘し、親の思い通りに生きることを強いない。「落ちこぼれ」だと非難しない。
「あなたはあなたのままでいいよ」「今のままでいいよ」と子どもを受け入れる。親の思い通りに育てようとしない。
つまり、「育てないことこそが、最良の子育て」だと私は思います。