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グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50Photo: Adobe Stock

ピラミッド構造とは?

 ピラミッド構造は、高い論理性が求められるコンサルティングファームなどでよく用いられる論理展開のフレームワークです。

 ピラミッド構造は、図表4-1のように一番上にメインメッセージである主張(当初は仮説。根拠が揃うにつれて、確固たる主張となる)があり、その下に主張を支える2~4つの根拠、さらにその下には根拠を支えるものそれぞれ根拠がある……、まさにピラミッドのような構造になっています。

 完成形のピラミッド構造は、ピラミッドのどの階層をとっても、上段から下段に向かって「Why?(なぜなら)」に答えるという関係でつながっています。

 つまり、

 「(主張)です。なぜなら(根拠A)、(根拠B)、(根拠C)だからです」「(根拠A)です。なぜなら、(根拠A-1)(根拠A-2)(根拠A-3)だからです」

 という関係にあります。

 同様に下段から上段に向かっては、「So What?(だから何)」に答えるという関係でつながっています。

 「(根拠A)、(根拠B)、(根拠C)です。だから(主張)が言えます」「(根拠A-1)(根拠A-2)(根拠A-3)です。だから(根拠A)が言えます」

 という関係です。

 ピラミッド構造を作るためには、まずイシュー(論点、議論すべきポイント)を明らかにします。

 どれだけ論理展開がしっかりしていても、そもそも議論する価値がないことを議論しても何の意味もないからです。

 イシューが設定できたら、次はロジックの枠をつくります。特に、メインメッセージを支える一番上のロジックの枠は非常に重要です。

 ここではビジネスフレームワークを用いることもあれば、人を説得するのに十分な「柱」となるような枠を独自に作ることもあります。

 スポーツチームがある選手を獲得しようとするのであれば、「戦力面での影響」「営業面での影響」「リスク」といった感じです。

 こうした枠を意識しながら、あとはファクトを組み合わせ、「So What?」「Why?」の質問をしながら、完成型のピラミッド構造に近づけていきます。

 結論から根拠を集めるトップダウン方式と、観察される事実から結論を導くボトムアップ方式の両方を適宜組み合わせるのが一般的です。

事例で確認

 図表4-2は、自分の部下B君が、同僚であるA君を解雇すべきだという主張をピラミッド構造で分析したものです。

 さて、皆さんはB君の主張に賛成するでしょうか?

 B君はよほど腹にすえかねているのかもしれませんが、さすがにこれだけの事実で人を解雇するのは無理がありそうです。

 よほど反社会的な行為があったなどなら別ですが、これだけしか事実がないなら、「A君はなにか悩みごとでもあるのかもしれない。それはそれでケアしながらちゃんと注意をしよう」といった程度の結論が適切でしょう。

 ピラミッド構造の主眼は納得性、説得力です。

 飛躍しすぎた解釈はこれらを削ぎますし、論戦になった時に勝てませんから、ぜひ客観的に自分の主張を検討する癖をつけたいものです。

用いる場面
・何かを主張する際に、その主張の説得力を高める
・どのような筋道や論拠でそのような主張をするのか、その構造を分かりやすくする
・相手の主張の問題点を探る
「ピラミッド構造」を使うコツ・留意点
1.
ピラミッド構造は、理屈は明快ですが、実際に構築しようとすると簡単ではありません。枠の設定は慣れてくれば比較的容易なのですが、難しいのは先述したように「So What?」の解釈を適切に行うことです。
たとえば「市場はこの2、3年飽和気味」「競合の撤退が目立つようになってきた」「自社の収益性はライバルとほぼ同等」「市場では現在4位」という要素からどのような「So What?」が導けるでしょうか。
ある人は「いずれ勝ち残れないのなら、自社も撤退を考えるべき」と考えるかもしれませんし、別のある人は「今こそ差別化を行って市場での地位を上げるチャンス」と解釈するかもしれません。
ピラミッド構造におけるメッセージは自動的に出てくるものではなく、徹底的に考えて「引き出す」ものだという点を強く意識してください。
2.
ピラミッド構造(的なもの)を用いた論理展開に関してよくある過ちは、まず結論があり、それに都合のいい情報のみ集めて論理を組み立てるというものです。
強引で偏った主張は長い目で見ると自分の評価を下げます。メタな視点から虚心坦懐に物事を見る勇気を持ちたいものです。