経営破綻した米シリコンバレー銀行Photo:123RF

米シリコンバレー銀行が経営破綻に至り、金融市場に動揺が広がっている。同様に破綻へ至ったシグネチャー銀行と併せ、そのメカニズムを簡潔にひもとくとともに、投資家が気になる今後の市場への影響について、市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏が展望した。

金利上昇で資産価値が減少
「連鎖破綻」は起きるのか

 FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ抑制のため、ちょうど1年前の2022年3月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)で金融引き締めを始めて以降、4.5%も政策金利が引き上げられた(現在の政策金利の誘導目標レンジは4.5~4.75%)。これだけ急速に利上げが行われれば早晩、“犠牲者”が出るだろうとみられていたが、案の定だった――。

 資産規模で全米16番目の中堅銀行であるシリコンバレー銀行(SVB)が3月10日、経営破綻に至った。金利上昇で保有する債券の価格が下落、つまり資産価値が減少し、債務超過同然の状況に陥ったのである。さらに、同12日には資産規模で全米29位のシグネチャー銀行の破綻も明らかになった。

 SVBに資産の中身が似ていること、業績が低迷している暗号資産(仮想通貨)業界との取引が多いという不安材料が頭をもたげていた中、SVBの破綻により信用不安が高まった。こうなると、同様の弱み(資産に債券が多い、業績が低迷している業界との取引が多い)を抱える他の銀行にも、連鎖的に影響が波及しないか不安が高まりがちだ。

 何しろ、シリコンバレー銀行の昨年末時点の総資産は2090億ドル(28兆2150億円)で、破綻した米国銀行の資産規模としては、2008年のリーマンショック時に破綻したワシントン・ミューチュアルに次いで史上2番目。シグネチャー銀行は3番目という規模感である。

 そこで以降では、(1)シリコンバレー銀行破綻の背景、(2)銀行の破綻はさらなる広がりを見せるのか、(3)SVB破綻後、国際金融市場では株価下落・金利低下・ドル安・金価格上昇という動きに見舞われているが、日本株も含め、今後の相場にどのような影響を与えるのかを展望していく。