南海キャンディーズ山ちゃんが
一流芸人になるためにはじめたこと

 そのあとの山里くんは、ネタ見せで「自分の書いたネタノート」、「私のアドバイスが書かれたノート」、「私のアドバイスと自分のネタの改訂版のノート」の3冊を常に用意し、授業中は他の生徒へのアドバイスも書きとめ、授業時間が余って質問コーナーになるとこれでもかというほど私に質問攻めをしてきました。

 気がつくと、彼がいた授業の最後は必ずマンツーマンの質疑応答になるほど彼とのやりとりは定番になりました。あとから本人に聞いた話では、私に質問するときも、授業前にあらかじめ聞きたいことを決めたうえで、さらに授業で気になったことも質問をしていたそうです。ここまで熱心な生徒は後にも先にも山里くんひとりだけです。

 山里くんは彼は頭の良さに加えて、「周到な準備」と「行動力」、そしてなにより「粘り強さ」を持っていました。

 入学当初、彼よりセンスのある芸人候補はたくさんいたように思います。ですが、最終的に努力し続けた山里くんはいわゆる「勝ち組」のなかに残りました。彼が『天才はあきらめた』という本を出したときに、それまでのことを思い出して、「山ちゃんは努力の天才やった」と連絡をしました。「芸人の思考」は努力で身につけるものだと私に再認識させてくれた教え子です。