ワインは人を理知的にも、過激にもさせる

 フランス革命の原因は、アンシャン・レジーム(旧制度)の維持不可能や食糧不足に起因するといわれる。たしかにそうなのだろうが、直接の起因はワインであった。パリの住人は、ワインに2倍も3倍もする税金をかけられることに我慢ならなかった。王や貴族たちが、市井の者には飲めない高級ワインを飲んでいることも、知っていただろう。だから、市井の者は「ワインの平等」を求め、ワインにかかる税金の撤廃を望んだ。それが、革命の強い動力源になっていたと思われる。

 ワインのタンニンは、人を理知的にさせ、平等をも志向させる。と同時に、ワインのアルコールは人に活力を与え、連帯させ、過激にもさせる。フランス革命は、ワインが先導していたといっていい。

 だが、フランス革命は市井の者に「ワインの楽園」をつくりはしなかった。革命政府もまた税収を求めていて、税関事務所を再建している。革命政府にすれば、ワインに酔っぱらった住人の騒擾など、革命の崇高な理念に反するものだったのだろう。だから、フランス革命はワインの入市税門の襲撃ではなく、政治犯を収監していたバスティーユ牢獄の襲撃からはじまるように語られたともいえるのではないか。

 こののち、1791年からワインの入市税門はいったん廃止される。が、1798年にはまたも復活し、ワインの入市税が消えるのは、第2次世界大戦後まで待たねばならなかった。