見えてきた「賃金・物価の好循環」、持続のカギは“家計の値上げ耐性”Photo:PIXTA

価格転嫁や賃上げ姿勢に変化
金融政策の正常化、早まる可能性も

 日本銀行の新体制がスタート、植田和男新総裁は就任後初の記者会見で、インフレ目標の達成はそう簡単な目標ではないとし、金融緩和の長期化も辞さない構えを示した。

 新総裁はインフレ目標の達成が難しくなっている理由として、物価や賃金が上がらないことを前提とした企業行動を挙げたが、最近では賃金・物価の好循環サイクルに入る萌芽が見られ、金融政策の正常化が思ったよりも早く開始される可能性が浮上している。

 企業の価格転嫁姿勢は変化しており、今後は今春闘の好調を反映して賃金上昇が幅広い財・サービスの価格に転嫁される可能性が高く、価格転嫁を通じた企業収益の改善はさらなる賃上げにつながり得る。

 こうした動きを持続させるには、物価上昇を上回る賃金上昇を実現し、家計の「値上げ耐性」を高めることが重要だ。

 金融政策の正常化を適切なタイミングで進めれば、家計の利子収入を増加させ、賃上げの恩恵を受けにくい引退世代の所得環境を改善させ、好循環の持続を後押しするだろう。