業界関係者の間で「次は外国人」との見立てもあったアステラス製薬の新社長に、前任の安川健司氏と前身の旧山之内製薬で同期入社だった岡村直樹氏が就任した。一見平和なトップ交代とは裏腹に、副社長に就任予定だった人物の突然の退職、中国での社員拘束などさまざまな波乱に見舞われている岡村社長を直撃した。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
元JDI社長の菊岡氏が突然の退職
グローバル化から日本型に逆戻り?
――ジャパンディスプレイ(JDI)社長から1年前にアステラス製薬CFO(最高財務責任者)へ転じた菊岡稔氏が3月末に突然退職しました。岡村氏の後任で副社長に就任する目前でした。
われわれも大変驚いているところです。この1年大きな貢献がありましたし、これから副社長として活躍していただきたいと思っていたときでしたから。
――菊岡氏は、22年7月のダイヤモンド編集部のインタビューで、アステラス製薬について「グローバル企業だけどローカルな部分が残っていましたので、真のグローバル化に切り替えていく必要があった」とし、そこに「やりがいを感じた」と語っていました(『前JDI社長のアステラス製薬CFOが就任後に気になった「ある財務指標」とは?』参照)。それからわずか9カ月で会社を去りました。
菊岡氏が当社のグローバル化の切り札だったわけではありません。われわれの考えるビジョンに彼が合致したから来てもらっただけで、同じようなマインドセットを持ったCFOを探します。
――ここ数年のアステラス製薬は、人事評価システムの改革、執行役員制度の廃止、リストラによる経営の効率化など、対外的には完全にグローバル標準にシフトしたように映りましたが、内実は菊岡氏が語っていた「真のグローバル化」と逆行する動きがあるのではないかと邪推してしまいます。