第一三共とアステラス製薬の製薬大手2社で4月、トップが交代した。アステラス製薬の次期社長は外国人になるという予想もあったが、ふたを開ければ“捲土(けんど)重来”生え抜き同期へのバトンタッチに、「お仲間人事」の評も。その裏事情と次の社長レースに迫る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
「外国人が有力」の予想を覆す
“お仲間人事”の新社長
製薬大手2社が4月に行った社長交代は双方、“サプライズ人事”だった。
まずは第一三共。2006年に三共と第一製薬が合併して以降、旧三共と旧第一の出身者が交互に社長を務める「たすき掛け人事」が続いてきたことから、次期社長の第一候補と目された人物も第一出身だった。しかし、この4月に就任したのは、前任の眞鍋淳(68歳)氏と同じ三共出身の奥澤宏幸氏(60歳)だ。
奥澤氏は執行役員 ASCA(日米欧以外の海外事業)カンパニープレジデントから取締役常務執行役員経営企画・管理本部長CFO(最高財務責任者)へ一気に引き上げられており、後継候補の1人として名前が挙がってはいた。しかし、たすき掛け人事を念頭にダークホースの位置づけにとどまっていた。故に“サプライズ”として受け止められた。
同じく今年4月に社長交代となったアステラス製薬も、05年に山之内製薬と藤沢薬品の2社合併で誕生した会社で、第一三共と同様生え抜き、かつ旧山之内出身同士でのバトンタッチとなった。
ただし、“サプライズ”が大きかったのはアステラス製薬。新社長CEO(最高経営責任者)の岡村直樹氏(60歳・上写真)は、前出の奥澤氏と異なり、「ノーマークだった」(業界関係者)。
アステラス製薬は近年の度重なるリストラ、人事評価システムのグローバル化、執行役員制度の廃止など、先行する武田薬品工業さながらに脱・日本型企業の動きが目立っていた。そのため、社内でも安川健司氏(62歳)の後任は「外国人社長が有力」との見立てがあった。
しかしふたを開けてみれば、年齢こそ2歳年下だが、前任の安川氏と同期入社で“竹馬の友”の岡村氏。予想は覆された。前回の社長人事では安川氏の対抗馬として名前が挙がっていたこともあり「一度社長レースで敗れた人物がまさかの返り咲き」(前出の業界関係者)と驚きは大きく、「お仲間人事」と評する者もいる。
次ページでは、捲土重来で岡村氏が新社長に就任した事情、さらには次の社長レースで挙がる最右翼の実名を明らかにする。