国内製薬2位のアステラス製薬は、2021年末退職のスケジュールで早期退職者を募集し、想定を大きく上回る約650人が退職した。それでも22年になって「アステラスが再び退職者募集をしている」との情報が飛び交い、業界がざわついた。特集『ステルスリストラ 気付けばあなたも』(全10回)の#5では、リストラが頻繁に行われる製薬業界の最新事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
早期退職者募集が終わった直後に
営業所長クラスが転職活動の“なぜ”
国内製薬2位のアステラス製薬は2021年6月、約450人の応募を想定した早期退職者募集を発表した。
旧山之内製薬と旧藤沢薬品工業が05年に合併して誕生したアステラスは近年、断続的に国内で早期退職者募集をしてきた。募集発表年は14年、16年、18年と、「2~3年間隔」の慌ただしさだ。
これは組織のグローバル化と大変革を同時に進めた国内業界トップの武田薬品工業と並び、国内製薬大手では際立った動きだ。
ダイヤモンド編集部の21年の取材で、現社長CEO(最高経営責任者)の安川健司氏は「必要とするケイパビリティー(性能)とキャパシティー(受け入れ能力)はどんどん変わってくる。それに合わせていつでも筋肉質な会社にしておくのは、経営者としての責任の一つ」と説明していた。
そのアステラスが冒頭のように再びリストラを敢行し、21年末までに想定人員を大きく上回る約650人が退職した。うち約500人は営業部門。すなわち主に高給取りとして知られる製薬業界の花形営業パーソン、医薬情報担当者(MR)だった。
しかし、である。一部業界関係者の間で大量退職の“アステラスショック”は年を越しても続いた。「22年になっても、退職者募集をしている」との情報が飛び交ったからだ。営業所長クラスにおいて、年明けから3月末退職を見据えた転職活動が目立ったのである。
これはなぜなのか。社内で何が起こったのか。