社長が即決したリーダーの答え
最初の役員と同じような質問が社長から投げかけられた後、最後のお決まりの質問となった。
「では、最後の質問をいいかな? 誰を面接官にすべきかの参考にしたいので、身の周りで、自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ」
そのリーダーは、ちょっと考えていたが、やがて口を開いた。
「まず◯◯さん、洞察力と、営業力が素晴らしいです。つづいて、◯◯さん、営業力はあまり無いですが、人望があり、人をやる気にさせる力がずば抜けています。リーダーの◯◯さん、現場を任せたら社長よりもうまいでしょう…すいません。そして、うちの部の◯◯さん、新人なんですが、ハッキリ言って私よりも設計する力は上です。」
社長はニコッと笑って、「ずいぶんと多いな。」という。
「当たり前です。皆私よりもいいところがあり、そして、私に劣るところがある」
「分かった。ありがとう」
――*――
そのリーダーが退出した後、間髪入れずに社長は言った。
「というわけで、面接官はアイツに決定だな。」
「そういうことですか…」
「彼は器が大きいんだ。私よりも上かもな。私はまだまだ変なプライドがあるからな。」
「確かに、面接官に変なプライドは邪魔ですね。」
「そうだろう。“身の回りで、自分より優秀な人間を挙げてみよ”と言われて、挙げることの出来た人数が、その人間の器の大きさだよ。」
「……」
「今年こそ、採用をきちんとやりたいな。まあ、彼に任せれば大丈夫だろう。」
――*――
そして、社長の予想通り、そのリーダーは素晴らしい人物を数多く採用した。
時には応募者に教えを請い、時には応募者を説得し、八面六臂の素晴らしい活躍だったそうだ。
今でも面接官をやる度にあの社長の言葉を思い出す。