地上の太陽 核融合新時代#4Photo by Takeshi Shigeishi

重工業メーカーや商社などの大手企業が今年3月に設立した核融合の業界団体、フュージョンエネルギー産業協議会。その副会長に選ばれたのが、2021年に創業したばかりのHelical Fusion代表取締役CEO(最高経営責任者)、田口昂哉氏だ。みずほ銀行やPwCアドバイザリーを経て独立した40歳の若手経営者は、核融合を巡る全世界のエネルギー戦争が既に始まっていると主張する。ではその戦いにどう勝つべきか。特集『地上の太陽 核融合新時代』の#4で、田口氏に聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

三井物産や旧興銀OBも在籍
気鋭ベンチャーの「野望」とは?

――Helical Fusion(ヘリカルフュージョン)とはどのような会社なのでしょうか。

 弊社のメンバーは約30人でその半数が研究者や技術者です。共同創業者は私を含めて3人。宮澤順一代表取締役CTO(最高技術責任者)と後藤拓也取締役は国立核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の元研究者です。

 他にも三井物産で資源ビジネスを担当していた者や、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)のベンチャー投資担当者らが在籍しています。

 核融合関連のスタートアップ企業は日本におそらく6~7社あると思いますが、核融合の発電炉に必要な設計を全て行っているのが弊社の特徴でしょう。コア技術の開発も進めながら2034年に世界初の核融合炉稼働、発電をターゲットにしています。

――なぜ核融合炉の設計や開発まで行う必要があるのですか。

 核融合炉はさまざまな最先端技術を組み合わせてインテグレーション(統合)しないと完成しない。例えば(米宇宙探査企業の)スペースXは、既存の技術をインテグレーションしてロケットを製造する。そのノウハウに価値があるわけで、核融合炉も同じです。そのノウハウがあれば、産業的に非常に強い立場を取れる。

 ただ、それをやろうとしているプレーヤーは意外と少ない。非常に大きな研究施設や多くの研究者が必要だからです。しかしわれわれには核融合科学研究所での約70年の研究の知見がありますし、それをけん引してきた研究者が共同創業者にいる。世界的にもまれなケーパビリティを持つ会社だといえます。

日本も参加する国際熱核融合実験炉(ITER)は、トカマク型と呼ばれる発電方式を採用し、多額の予算をつぎ込んで開発を進めている。一方、田口昂哉氏が率いるHelical Fusionは、ヘリカル型と呼ばれる方式で世界初の核融合発電に挑む。なぜヘリカルか。次ページで田口氏がその理由を明かす。