新日本酒紀行「作」三重県材を多用した社屋 Photo by Yohko Yamamoto

目の届く小さなタンクで丁寧に醸す、究極の透明感と切れ味

 もぎたての果実のような香味と透き通るような味で人気の「作」は、三重県鈴鹿市の清水清三郎商店の清水慎一郎さんが、1998年に立ち上げたブランドだ。輸出も好調で、2021年には新蔵も稼働し、生産能力は1.5倍に拡大。この成功の陰には、清水さんの大胆な改革があった。「作」発売前は大手に酒を納めていたが、将来を見据え、高品質な酒造りへ移行。3トン仕込み用の大型タンクを全て処分し、350キログラム仕込みの小型タンク2本で再始動した。

 杜氏は鈴鹿市出身の25歳の内山智広さんを抜擢し、透明感と切れ味を追求。醸すたびに修正を加え、質を向上させた。国内外の鑑評会で最高位を連続で受賞すると、海外からも注文が増え、2本のタンクが4本、そして8本と増え、四半世紀がたった今、50本のタンクで四季を通じて醸造する。市場では生原酒の需要も高いが、清水さんは味が劣化するため全て加熱殺菌して出荷。だが、火入れでも生原酒のフレッシュさが出せないか研究を重ね、誕生したのが「作 インプレッション」だ。ずばぬけた爽やかさと透明感ある鮮やかな味に誰もが驚愕した。