東京地検特捜部が18日、アクティビスト(物言う株主)対応で知られるアイ・アールジャパンホールディングス(以下IRジャパン)の元副社長、栗尾拓滋氏を金融商品取引法違反(取引推奨)容疑で逮捕した。今後の捜査で解明が望まれる注目ポイントを解説する。
500社超の顧客情報は
「インサイダーの宝庫」
逮捕容疑は2021年3月、IRジャパンが公表した業績下方修正に関するインサイダー情報を知人女性らに伝えたとされる。情報を受領した知人はIRジャパン株を売り抜け、損失を免れたという。
IRジャパンは22年6月1日、証券取引等監視委員会から東京都内の本社などの家宅捜索を受け、3日に栗尾氏を「一身上の都合」で辞任させていた。だが6月6日にダイヤモンド・オンラインが家宅捜索の事実をスクープし、インサイダー事件が明るみに出た(『【スクープ】株主総会の“参謀役”アイ・アールジャパンに強制調査!「上場規程に抵触」の衝撃証拠を入手』https://diamond.jp/articles/-/304350)。着手から約1年となる今月が「Xデー」とみられていた。
この事件は、今後の特捜部の捜査次第で、栗尾氏の個人的な犯罪で終わるか、IRジャパンと同社顧客を巻き込んだ事件となるかが分かれてくる。注目すべきポイントは三つある。
一つ目のポイントが、IRジャパンの顧客情報を利用したインサイダー取引があったかどうかだ。
IRジャパンは500社を超す上場企業の顧客を抱え、アクティビスト対応やM&A、業界再編といった、株価に影響を及ぼす機密情報を扱っている。もし、栗尾氏がIRジャパンの顧客情報を不正利用していたとすれば、法人としてのIRジャパンも無関係ではいられない。
今回の逮捕容疑はIRジャパン株式のインサイダー情報なので、顧客情報を使ったものではない。だが関係者によると、栗尾氏からインサイダー情報を伝えられた知人は、複数の銘柄を取引していた。そして、現在取材で把握できている銘柄の全てが、IRジャパンの顧客企業なのだ。
そのうちのいくつかを見てみよう。