【スクープ】IRジャパン衝撃の「買収提案書」入手、東京機械の買収防衛でマッチポンプ疑惑Photo by Takeshi Shigeishi

アイ・アールジャパンの元代表取締役副社長でインサイダー取引疑惑の渦中にある栗尾拓滋氏が2021年春ごろ、投資会社のアジア開発キャピタル(ADC)代表と面会し、新聞輪転機メーカーの東京機械製作所の買収提案を行っていたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。ADCは同年夏以降、東京機械株を買い増し、経営権争奪戦に発展したが、東京機械の防衛アドバイザーを務めたIRジャパンのトップが、実はADCに東京機械の「乗っ取り」をけしかけていたという驚愕の事実が発覚した。(フリーライター 村上 力、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

東京機械VSアジア開発の経営権争奪戦
勃発前にIRジャパン幹部が買収提案

 東京機械とADCの経営権争奪戦を巡っては、輪転機ユーザーの新聞各社が「買い占め反対」キャンペーンを展開したことで注目を集め、「経済安全保障」まで引き合いに出した反対論が叫ばれた。

 騒動の発端は昨年7月だ。ADCが東京機械株を約8%保有する大量保有報告書を提出。そこから同月末までに、一気に32%超まで買い進めた。驚いた東京機械は、8月に買収防衛策導入に動き、10月末の臨時株主総会へ向けた委任状争奪戦(プロキシーファイト)と買収防衛策差し止めを巡る法廷闘争が繰り広げられた。

 買収防衛策は臨時株主総会で可決され、最終的に読売新聞を中心とした新聞連合がADCの株式を買い上げることで、紛争は東京機械の「勝利」で幕を閉じている。

 だが東京機械は万年赤字体質で、株価純資産倍率(PBR)は0.3倍の低水準で推移していた。現在もPBR1倍割れは変わらず、株主にとって決して喜ばしい結果とはいえない。

 一方で、巨額のフィーを手にしたのが有事対応のアドバイザーの面々である。

 買収防衛を得意とする西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士、メディア対策のPR会社パスファインド、そして“上場企業の守護神”との呼び声が高いプロキシーアドバイザーであるIRジャパンの3者は、「鉄のトライアングル」で防衛線を張り、赤字体質の東京機械から計5億円近いフィーを得た。

 ところが、一連の騒動には、驚愕の裏側が隠されていた。なんと防衛側のIRジャパンのトップが、ADCに対して東京機械買収の提案を行っていたのだ。

 ダイヤモンド編集部は、「2021年3月25日」の日付が付された、ある提案書を入手した。

 それは当時、IRジャパンの代表取締役副社長だった栗尾拓滋氏が、ADC代表(当時)のアンセム・ウォン氏に提案したものだ。関係者がダイヤモンド編集部の取材に対し、両者が面会した事実と提案書の存在を認めた。

 問題は、提案書の中身だ。そこには驚愕の「買収提案」が記されていた。次ページからその全てを明らかにする。