リテラシーギャップを解消するために何をするべきか
「世界的コンサルティング会社のネットワークに期待したい」
コンサルティング会社に勤務していると何度も耳にする相談である。私たちが何か特別な情報源を持っているとの期待があるのだろう。実は特別な情報源はそうそうあるものではない。コンサルティングの多くの業務は、一般紙、業界紙、専門誌、国内外の論文を数年分徹底的に調べ上げることから始まる。
実際のケースを例に説明しよう。たとえば、「我が社に関係しそうな最新の国際経済動向(マクロ/ミクロ)を調べよ」というお題が出た際の対応だ。抽象度が高いお題であるが、まず実施するのは、以下に示すような各メディアの見出しを集めた表の作成である。
与えられる時間は長くて3日、通常は1~2日で一定のアウトプットが求められるため、すべての情報ソースを読むことはできない。見出しだけでもよいから、まず素早く集める。その後はあたりをつけて掘り下げていく。その際は、まずまとまった量の情報を読み、関連する機関が何をしているかの情報を集めるのである。この時に1次/2次情報か、定量/定性情報かは問わない。とにかく知らないのだから片っ端から集めるのだ。書店に行って関連しそうな分野の書籍はとにかく全部買って(現在ではアマゾンでクリックして)目次だけでも目を通すのである。
これを2~3日続けるだけで傾向がわかってくる。論点や調査に必要な道筋をつかむ概要レベルまでは、思ったより難しくない。この作業をやるか、やらないかの差が重要だ。作業は簡単だが、効果は想像以上に大きい。見出しを見て書いてあることを予想していくように読めば、1時間もかからない。5~10分で新聞のチェックは可能である。
なお筆者は、業務外でも同様の情報収集を日課にしている。ただこれにはコツがある。特に最初の段階は、“何となくダラダラやる”のはダメだ。自分が「世界あるいは社会で何が起こっているのか」や「起こっている事象がいまの生活にどう影響しそうなのか」「大人になったらどんな時代が待っていそうなのか」などを中学生や高校生に話し聞かせる(つまりアウトプット)レベルになるという目標を決め、最低3時間はぶっ通しで調べることだ。できればぶっ通しで3日間ほどの作業を複数人以上で実施する。1日の終わりに何がわかったか、次の作業は何か、何がわかっていないか、何を掘り下げるべきなのかを全員で照らし合わせ、備忘録を簡単に残しておくのだ。これを数日続けるだけである。以後、かかる時間は劇的に減っていく。
まずは自分で動いて、調べることが経営戦略の立案、実行にあたっての基本であるのだ。しかし、企業経営の世界では、残念なことに部下や外部に丸投げというケースが珍しくない。「知らないことを知らない」という現実から目を背けず、自分で少しでも手を動かせば「あれ? 何かが噛み合わないぞ?」となるはずである。それが変化への第一歩につながっていくのだ。
書籍『パワー・オブ・チェンジ』では、実際の情報戦の進め方について、事例を交えてさまざまな観点から詳細に解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。