九州のベンチャー企業「nommoc(ノモック)」が、無料配車サービスを開始する予定で実証実験中だ。単なる配車アプリや無料の移動手段としてではなく、「移動する広告媒体」というノモックのサービスについて、モビリティジャーナリストの森口将之氏に国内外の交通事例を交えた意見を聞いた。(清談社 松嶋千春)
交通の無料化が目的ではないノモック
活躍の場は大都市圏か
週刊ダイヤモンド2019年2月16日号の配車アプリ特集では「nommoc(ノモック)」の吉田拓巳社長に同社のビジネスモデルについてインタビューを敢行。そこで吉田社長は「目指すところは無料タクシーではなく、あくまで新しい広告媒体を作ること」というスタンスを示した。
モビリティジャーナリストの森口将之氏は、これを「昨年末、DeNEの配車アプリ『MOV(モヴ)』が、日清のどん兵衛とコラボレーションして0円タクシーを走らせました。『移動が無料になる』というフックは一緒ですが、ノモックはアピールのポイントを変えてきましたね」と見る。
ノモックの主な媒体は、タクシーを貸し切って車両内にディスプレイを設置し、ユーザーに合わせた広告を流すというものだ。登録時に得られるユーザーの年齢・趣味嗜好と、移動時の目的地情報などを組み合わせることによって個人情報の厚みを増し、広告のターゲティングに生かす。こういった展開の実現性について、森口氏は次のように指摘する。
「細分化したターゲット広告を打つとなると、需要のパイが大きくないと難しいと思います。大都市以外では成り立たせるのは難しいかな、という印象です」