経営・管理ビザはただのプロセス、「永住権」が最終ゴール?

「今の習近平による独裁政権下ではいつ財産を没収されるかわからない」という不安感を強める中国人が増えているが、冒頭で取り上げた動画は、国外脱出を計画する多くの中国人に刺さった。

 中国人の注目が集まる経営・管理ビザに関して、行政書士のI氏は「このビザの取得は彼らにとってのプロセスであり、目指すのは永住権や帰化(国籍取得)です」と捉えている。

「最終ゴールに行き着くには実績が必要であり、順法と納税をしっかりやらなければ永住や帰化はできません。逆に言えば、永住や帰化を視野に入れている人は社会保険料をきちんと納めています」(同)

 実際、山西省出身のSさんは2年前に経営・管理ビザを取得し、都内で会社を設立した。しかし、「永住権を申請するための準備をしている」として、最近、社会保険(厚生年金保険と健康保険)に加入するようになった。社会保険に加入していないと永住ビザの審査でマイナス要因になるためだが、こうした選択からは、退路を断って日本に上陸したことがうかがえる。

 経営・管理ビザは、ビザの中でも最も取得が難しいが、更新は著しく容易だという。この在留資格と中国人による公的医療保険の不正防止について、I氏は次のように語っている。

「入管の視点から解決しようとするのなら、更新を今よりも厳しくするのが最も簡単で効果的だと思います。なぜなら、そうすることで、公的医療保険の不正が継続できなくなるからです」

 ただ、外国人と医療保険の関係については、異なる現場からこんな声も伝わってくる。

 日本の労働現場の最前線を支える技能実習生と身近に接する日本人の通訳Nさんは、「技能実習生は少ない収入の中から、年間約50万円の社会保険料を払っています。こうした外国人が日本の保険制度を支えている一面もあるのです」と話す。

 ちなみに、今の社会保険は1961年にできた制度で、今般の外国人在留者を想定した設計にはなっていない。日本に在留する外国人が300万人を突破した今、外国人との共生のための医療保険対策は焦眉の課題だろう。