セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏#1 今年2月27日、会見で握手するカシオ計算機の樫尾和宏社長(左)と増田裕一専務(右、肩書はいずれも当時) Photo:JIJI

電撃的なトップ交代で、時計業界に激震が走った。この4月、樫尾家が代々社長を務めてきたカシオ計算機で初の「非創業家」社長が誕生したのだ。創業メンバーである樫尾四兄弟の子息が経営幹部に名を連ねているにもかかわらず、非創業家のトップが選出されたのはなぜなのか。再び、社長のバトンが創業家へ受け継がれることはないのか。特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』(全8回)の#1では、カシオのトップ人事の裏側に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

カシオで「非創業家」社長が誕生
電撃トップ交代の理由とは

「次の社長も樫尾家から出ると思っていた。まさか増田さんが次期社長とは…」

 時計メーカー大手、カシオ計算機のある中堅社員は、自社の電撃トップ交代に驚きを隠せない。

 詳細は後述するが、カシオは設立以来、半世紀以上にわたり創業家である樫尾家が代々社長を務めてきた。それが今年に入り、樫尾和宏社長(現会長)が突如退任を表明し、初の「非創業家」である増田裕一専務に後を託すと発表したのだ。樫尾家と共に歩んできた社員たちの間に衝撃が走るのも無理はない。

 社長を退いた樫尾和宏氏の時代から、創業メンバーである「樫尾四兄弟」の子息が経営幹部に名を連ねていた。なぜ、社員の予想に反して非創業家のトップが選出されたのだろうか。

 次ページでは、“名門”時計メーカーであるカシオのトップ人事の裏側に迫る。再び、社長のバトンが創業家へ受け継がれることはあるのだろうか。