コストはすべて「カネ」に換算できる

 一方で、たとえ「商品の効能を享受するまでにかかる時間」が同じだとしても、その時間を費やすのが「だれ」なのかによって、労働コストは変化します。これは、人によって「時給」が異なっているからです。

 時間を費やす主体は「買い手自身」とはかぎりません。「ほかのだれか」に労働を肩代わりしてもらうようなケースもあるからです。その場合には、代わりに働いてくれる人の時給が問題になります。

 時給1万円のAさんが、取引先のオフィスになにか届けものをするようなケースを考えてみましょう。そのオフィスに徒歩で行けば、当然お金はかかりませんが(付随コスト=0円)、往復で90分がかかります。また、タクシーで往復すると、15分の時間と2000円の料金(付随コスト)がかかるとします。
 他方で、時給1000円のBさんにお使いを頼むとどうなるでしょうか? Aさんよりもかなり時給が低いBさんに動いてもらえば、トータルのコストはかなり抑えられるはずです。それぞれの到達コストは次のとおり。

(Aさんが徒歩)
 1万5000円=料金0円+労働コスト1万5000円[1万円/時×1.5時間]
(Aさんがタクシー)
 4500円=料金2000円+労働コスト2500円[1万円/時×0.25時間]
(Bさんが徒歩)
 1500円=料金0円+労働コスト1500円[1000円/時×1.5時間]
(Bさんがタクシー)
 2250円=料金2000円+労働コスト250円[1000円/時×0.25時間]

 到達コストの観点から見ると、この場合は時給が低いBさんに歩いて届けてもらうのがいちばん安上がりだということになります。

 さて、内容をまとめておきましょう。

 商品のコスト=価格コスト+到達コスト

[ポイント①]買い手が負担するのは「価格コスト」だけではない
[ポイント②]到達コスト=労働コスト+付随コスト
[ポイント③]いずれも「金額」に換算できる

 もちろん、CPを判断する際には価格コストが大部分を占めているのですが、たとえ商品の値段が同じであっても、この到達コストの大小が買い手の選択に大きな影響を与えます。
 そのことは、アマゾンを筆頭とするECサイトの成功を見れば明らかでしょう。しかも、ECサイトは価格の安さの点でも、実店舗に勝っていることも少なくありませんから、彼らが競争力を持つのはなおさらです。