「費用」と「コスト」を区別する理由

 CPはコストあたりのパフォーマンスを示しますから、「パフォーマンス÷コスト」の商として表現されます。

 コストパフォーマンス(CP)=パフォーマンス÷コスト

 では、このときのパフォーマンスとかコストというのは、なにを意味しているのでしょうか? 今回はコストのほうに注目してみましょう。

 最初にくれぐれも注意いただきたいのは、ここで言うコストは、あくまでも買い手にとってのコストであるということです。これまでさまざまな費用に言及してきましたが、それらはすべて企業(=売り手側)が負担するものでした。しかし、商品のCPにおいて問題となっているのは、買い手が商品のパフォーマンスを受け取るまでに負担せねばならないコストのことです。

 本書ではこの点を区別するために、売り手側が負担するものを「費用」買い手側が負担するものを「コスト」と呼ぶことにします。これはあくまでもわかりやすさのための便宜的な区別であり、単語そのものがそうした意味の違いを持っているわけではありません。

 では、買い手が負担することになるコストとは、なんでしょうか? だれもがすぐに思いつくのが商品の「代金」です。実際、その商品の「価格」は買い手が負担するコストの大部分を占めていると言えるでしょう。これを価格コストと呼びます。

代金だけが「コスト」ではない──到達コスト

 一方、買い手がなにかを購買する際に支払っているのは、価格コストだけかというとじつはそんなことはありません。たとえば、ある限定商品を購入するために、隣町まで歩いたり電車に乗ったりしなければならないとすれば、一定の労力や電車賃がかかります。また、その商品を手に入れるまでには、それ以外にもさまざまなコストがかかっているはずです。

 このように、商品の効能を享受するまでにかかるコストのことを到達コストと呼ぶことにします。そして、この到達コストのうち、効能を享受するまでにかかる労力が労働コスト、それに付随するお金(たとえば電車賃や送料)が付随コストです。

 ここで、まず注意しておきたいのは、労働コストといえども、それがコストであるかぎりにおいては「金額」に換算可能であるということです。労働コストは以下のように算出できます。

 労働コスト=時給×商品の効能を享受するまでにかかる時間

「商品の効能を享受するまでにかかる時間」でいちばんわかりやすいのは、商品を手に入れるまでの時間でしょう。それ以外にも、たとえばなにか新しいデバイスやソフトウエアを購入した場合、その操作方法を習得するまでにかかる時間なども労働コストに関わると言えます。操作に慣れるのに1週間かかる機器と10週間かかる機器があった場合、もし両者の価格(貨幣コスト)が同じだとしても、労働コストが異なるため、後者のほうがよりコストが大きい商品だということになります。