破天荒なのに誰からも愛される芸人とは?
それは野性爆弾の「くっきー!」こと川島くんです。彼はNSC入学当時、鋭い眼光に頭には剃り込み、加えて腰にはチェーンが10本以上もぶら下げられていました。歩く度にカチャカチャと音を立てて、それは不気味な風体でした。
注意していいものかと思いながらも私も講師です。チェーンの音が気になってはみているお客さんもネタに集中できないですから、いい芸になりません。そのことを念頭に、勇気を出して「チェーンうるさいねん。ネタに使わないんやったら外せ」と指導しました。
逆ギレされるのは...とドキドキしながら反応を待つと、川島くんは素直に「はい」と言ってチェーンを外しました。彼は当時も今も芸風は尖っていますが非常に柔軟な感覚を持っています。テレビや舞台で多少無茶な芸をやっても彼の仕事が減らないのはそういった素直な心でお客さんやスタッフと向き合っているからでしょう。だからこそ、「あいつ、いつも無茶してるけど、どこかに憎めないんだよなぁ」と多くの人に愛される芸人になるわけです。
もしあのときに川島くんが「なんで外さなあかんねん」と人の声に耳を傾けることをしなかったら、自分のやりたいことだけをやる独りよがりな芸人になっていたでしょう。
今でもNSCには尖った生徒が入ってきますが、売れるかどうかはここの差にあります。尖るのは構いませんが、尖ったうえで人の意見を聞けるのか、尖ったままで終わるのか、その結末は言うまでもないでしょう。
ちなみに川島くんは、今でも完璧な敬語とまでは言わないですが、彼らしい形で私や先輩芸人に接してくれます。その素直な姿に「愛される芸人」としての本質が見えて、若手芸人たちにとっての素晴らしいお手本となっています。