誰でも「頭がいい人」のように思考するためのツール「フレームワーク」。だが世の中には、いろいろなフレームワークが溢れていて、「いざ使ってみよう!」というときにどれを使えばいいのかわからない…。こんな悩みをかかえている人も多いだろう。それを解決してくれるのが、『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』だ。厳選されたフレームワークだけを紹介し、使い方のコツをシンプルにまとめた非常に便利な1冊だ。本連載では、本書の内容から、「誰でも実践できる考えるワザ」をお伝えしていく。

SWOT分析とは?

 SWOTは、図表12-1に示したように、「内部×外部」と「ポジティブ(好ましい傾向)×ネガティブ(好ましくない傾向)」という2つの軸のマトリクスとして整理することができます。

 外部要因に入る要素としては、マクロ環境や業界環境、市場・顧客や競合の環境などが主なものです。

 一方内部要因に関しては、「ヒト・モノ・カネ」やバリューチェーンで見たときの自社の特徴が当てはまります。

 かつては欧米でもSWOT分析は環境分析の花形でしたが、あらゆる経営環境を1つのチャートにまとめようとするため、かえって分析の精度が落ちるなどの批判もあり、欧米ではかつてほど頻繁には用いられていません。

 ただし、日本企業ではいまでもこのフレームワークを用いることが多く、また、プラスの側面とマイナスの側面の両方に目を配るという発想そのものが重要なポイントでもあるため、ぜひ覚えておきたいフレームワークです。

 SWOTの2軸について言うと、ある事象が内部要因に属するものか外部要因に属するものかを判別するのは難しいことではありません。

 社内のことか社外のことかを仕分ければいいだけです(もちろん、株式保有率の低い関連企業など、微妙なものはあります)。

 一方で、内部外部を問わず、ある要素がポジティブなことかネガティブなことかを判断するのは難しい場合が少なくありません。

 たとえば、「自社の組織が小さい」ということは、ある側面から見れば経営資源や知名度、ブランド力が弱いということにつながるため、普通は弱みと考えられます。

 一方で、組織が小さいからこそのポジティブな面もあります。

 具体的には、小回りが利く、戦略の徹底や企業変革が比較的しやすい、階層が少ないため顧客の声が届きやすいなどです。

 つまり、ある1つの要素が強みにも弱みにも(あるいは機会にも脅威にも)なりうるのです。

 表層的な事象だけを見るのではなく、その意味することをしっかり押さえる必要があります。

事例で確認

 SWOT分析の発展編として、クロスSWOTという分析もあります。

 これは、SWOTで分析した項目の中から特に重要そうな強み、弱み、機会、脅威を抜き出し、図表12-2のようなマトリクスを作って対策を検討するものです。

 たとえば、「強み×機会」のセルは、まさに自社にとっては大きなチャンスですから、徹底的に有利なポジションを築けるような施策を考えます。

 それに対して、「弱み×脅威」のセルは、会社にとってのダメージが極力少なくなるような打ち手を考えなければなりません。

 図表12-2のケースでは、スマートフォンの浸透を機会と捉え自社の持つアニメコンテンツを人口のボリュームゾーンである団塊ジュニアに売り込もうとしています。

 これは単に「強み×機会」になるだけではなく、「弱み×機会」の活用、「強み×脅威」に対する好影響も期待できることから、うまく展開できれば一石三鳥の施策となる可能性があります。

 なお、図表12-2の事例は単純化のため、SWOTの各要素を1つ2つ抜き出しただけですが、実際にクロスSWOTを行う場合には、SWOTの各セルから重要な要素をそれぞれ3つほどピックアップし、それらを掛けあわせながら有効な打ち手がないか、その可能性を検討するというアプローチをとるのが一般的です。

用いる場面
・経営者や管理職が経営課題を考えたり、事業機会を検討する
・SWOTの議論を社員全員で行うことで、自社が置かれた環境に関する意識合わせを行う
コツ・留意点
1.
ビジネスリーダーとしては、ある程度ニュートラルな視点はもちながらも、ある要素を弱みではなく強み、脅威ではなく機会と見なせないかと前向きに考えることが必要です。
特に、新しい事業機会を探る場合などは、
世の中の動向を自社のビジネスチャンスにいかにつなげるかというバイタリティのある発想こそが、新時代を切り開きます。
たとえば規制緩和はそれまでの既存プレーヤーにとっては一見脅威と映ります。
しかし、規制緩和によって市場成長が加速されるのはよくある話ですし、その中で新しい差別化を打ち出したり、ニッチ市場を見つけることで、市場でのポジションをより強固なものにできる可能性もあるのです。


2.
SWOTで分析する際は、ある程度の丁寧さはもちろん必要ですが、企業を取り囲む経営環境のうち、特に重要なものを選り分けるセンスと大胆さも求められます。
実際の分析では、まずはホワイトボードやポストイット等を用いてSWOTの各項目をどんどん埋め、その後に影響度の高そうなもののみを残すという手法がとられます。