「対面」と「オンライン」とで異なる講師との対話

 1時間のお昼休み後も、マナーの演習が続けられた。「電話応対」では、受講者が3人1組になって、「受け手」「かけ手」「観察者」を順番に担当していく。この演習のポイントは、2人1組ではなく、3人目である「観察者」がいることだ。3人目=第三者が客観的に「受け手」「かけ手」のやりとりを観察し、感想を述べたり、「もっとこうしたほうがいい」というアドバイスを送ったりすることで“気づき”が得られるのだ。これは、垂水講師が冒頭に話していた学習目標の「グループのメンバーにもしっかりと助言できるようにしましょう」の実践でもある。

 応用編として、電話をつなぐ相手が出張中・会議中・休暇中の場合など、さまざまなシチュエーションに対応する練習も行われた。「出張先は相手に教えないほうが良いですか?」「休暇を取っていると言っても良いのでしょうか?」など、受講者から垂水講師への質問もあり、新入社員たちが実際のやりとりをイメージしながら自らしっかり考えている様子が伝わってきた。受講者と垂水講師のコミュニケーションを見ていると、講師との対話は対面よりもオンラインのほうがスムーズなようにも感じた。垂水講師は、「オンラインは、対面と違って、(講師の目線からは)全員がフラットに見える」と言う。距離感が平等なことは、オンラインのメリットだろう。その一方、「全員に同じ距離で見られているという意識から、全員の前で失敗するとダメージが大きくなってしまうこともある。ダメなところは指摘しつつ、挑戦したことを称えるようにしている」と、垂水講師は解説する。

 続いて、名刺交換の基本ルールを学ぶ演習が始まった。学習動画を見ながら、「1対1」「1対多」「多対多」など、さまざまなケースを確認していく。「テーブル越しの名刺交換は基本的にはNG」「訪問した人が先に名刺をしまう」など、新入社員のまったく知らないルールも多く、メモを取る姿が目立った。「来客誘導」の演習では、来客への声のかけかた・ノックのしかた・席次・お見送りの際のエレベーターでの手順……など、細かいシーンでのレクチャーがあったが、これらは、ただ聞いて終わりではない。研修の総仕上げとして行う「総合ロールプレイ」の中で、学んだことをすべて実践しなければならないのだ。「総合ロールプレイ」には、学習済みの電話応対なども含まれ、1グループ6人で役割を演じていく。また、オンラインでは、誰がどのシーンを行っているのかが分かりにくいため、脚本の「ト書き」ふうに説明を行う「ナレーション役」も必要となる。対面での研修とはまた違ったハードルの高さが、受講者の深い学びを生んでいくにちがいない。

 身につけるべきマナーのすべてが盛り込まれた「総合ロールプレイ」――各企業の新入社員たちはうまく行えるだろうか?