特殊詐欺の対応策と酷似していると思った読者も多いだろう。結局、人同士の“直接のコミュニケーション”というある意味アナログで基本的な手法に回帰するのではないだろうか。

犯罪対策でも
進むAIの活用

 一方で、AIは犯罪捜査にも活用される見込みだ。

 米国シカゴ警察では、犯罪予測システム「Hunchlab」を活用している。

 この「Hunchlab」は、天候や経済、過去の犯罪データなどから、マップ上に犯罪発生が予測される地点を表示するシステムとなっている。

 ロイターによれば、2017年1月から7月の半年で、殺人事件がシカゴ全域で前年同期より3%増えた中で、犯罪予測システムを活用した地域は殺人事件が33%減ったという。

 日本においても、警察庁が2019年度からAIの実証実験を開始しており、すでに各地で「街頭犯罪の発生予測」をもとにしたパトロールなどの検討が進められている状況である。

 また、「AIを活用し、防犯カメラに写っている自動車の画像から車種を割り出していく“車種種別の判別“」や「警備における会場内外に設置された防犯カメラが捉えた映像の中から不審と思われる点を自動的に検知する”警備での不審点の抽出“」などといった各種実証実験が行われている。

 これまで解説したように、AIを悪用した犯罪は容易に想像される一方で、AIがもたらす社会の進歩は革新的だ。

 労働力不足の解消や生産性の向上、社会安全性の向上など、これまで社会が抱えていた問題に光が差し込んでいる。

 AIの悪用による犯罪への助長を理由に革新的な技術を強制的に制限し萎縮させることは、AI技術発展の抑制につながる。技術自体が悪なのではなく、問題は使い手が「悪」の場合があるということだ。

 とはいえ、技術発展のスピードに対し、AI技術の悪用への対策が遅れているのも事実だ。

 AI技術のさらなる発展のためにも、国としてまずは起こりうるリスクを抽出し、適切な対応を模索する必要がある。また、我々一般市民も、身近な犯罪としてAIが悪用されないようその手口を認識し、十分に注意していただきたい。