Photo:PIXTA
首都圏のビジネスマンの足を支える鉄道。その運行を司る大規模システムATOSに日本で初めてAIエージェントを取り入れる動きが進んでいる。社会インフラを回す本番環境に、いかにAIを導入することができるのか。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#16では、鉄道業務へのAI投入とその驚きの効果を見てみよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
世界で最大級の鉄道輸送管理システムATOSを
AIエージェントはどう変えるのか
ひっきりなしに行き来する列車に、1日に数百万人が乗降するという首都圏エリアのJR東日本。この世界でも有数の超過密な運行を裏で支えるITシステムが、東京圏輸送管理システム(ATOS)だ。
1996年に東京~甲府間の中央本線で初めて導入され、その後、東京圏の多数の路線へ拡大。山手線、京浜東北線、中央線など主要24路線の200駅以上を対象に、ダイヤ管理、運転整理、自動進路制御、旅客案内、保守作業管理などをつかさどる。
駅の場内信号や出発信号の進路設定を自動化し、駅の連動装置と連携したり、ダイヤの乱れに対応して遅延時の列車順序や折り返しを調整したりなどをリアルタイムに行う。また、発車標(列車の発車時刻、行き先や列車種別等の情報を示す案内表示装置)、自動放送、ホーム案内などをダイヤと連動して更新する。さらに保守計画・指令業務までを含めて広範囲に管理するものだ。
つまり、このスケールの路線数でしかも2~3分間隔で列車が走る環境を、リアルタイムに制御・把握するのがATOSだ。世界の鉄道運行管理システムの中でも最大規模のものとなっているという。
首都圏の足を支える大動脈ともいえる基幹システムに、AIエージェントを取り入れる世界初の取り組みが目下進んでいるという。
鉄道は社会インフラであり、ひとたび事故が起きれば人命に直結する。その鉄道業務の中核に当たる部分に、JR東はどのようにAIを導入しようとしているのか。多くの企業でAI活用がいわば事務処理や業務支援などバックエンド業務の効率化にとどまる中、いわば「本丸」に切り込むJR東。具体的にはどのように進めているのか。さらには今後鉄道に特化した「鉄道版生成AI」やAI基盤も開発するという。次ページから詳しく見ていこう。







