忍び込む強盗写真はイメージです Photo:boonchai wedmakawand/gettyimages

今年1月に東京都狛江市で起きた強盗殺人事件を皮切りに、全国で強盗事件の報道が後を絶たない。その計画性や凶悪さ、相次ぐ白昼堂々とした犯行には、明日は我が身かと不安を覚える人も少なくないだろう。この記事では元警察官の視点から、なぜこのような強盗事件が発生するのか、対策はあるのか、そして、万が一出くわしてしまった場合の対処法などを解説する。日頃の意識変化から対策できる内容なので参考としてほしい。(ヴァンガードスミス代表取締役 田中慶太)

金銭目的の犯罪は凶悪化
リスク分からない「素人」が怖い

 長い間、日本国内において「防犯」といえば空き巣対策が主であった。その次に挙がるのはひったくりや、変質者などの不審者対策。近年はこれに各種詐欺に対するものが加わり、防犯に対する社会の関心そのものは向上しているように思う。

 しかし、こと「強盗」に対し、今ほど関心が高まったことがあっただろうか。

 これまで「強盗事件」というと、空き巣からの居直り強盗や路上強盗、貴金属店を狙った集団強盗などを思い浮かべる人が多かっただろう。しかし、今や、在宅前提の個人宅を狙った強盗事件が日本で頻発している。犯罪の動向に変化が生じているということに他ならない。

 警察庁が発表している犯罪統計資料によれば、2022年の刑法犯認知件数は前年比5.8%増と、およそ20年ぶりに増加へ転じた。さらに2023年1月から4月までの資料では、暫定値ながらすでに前年同期比23.1%増加という数値が示されている。

 この数字には、コロナ禍において減少した街頭犯罪が、行動制限の緩和とともに増加しているなど、単純な治安悪化とは言い切れない要因も含まれる。だが年々減り続ける住宅への侵入窃盗やひったくりなどの窃盗に対し、住宅を対象とした侵入強盗は2022年に前年比20.6%増加している。つまり、金銭目的の犯罪には凶悪化の傾向がうかがえる。

 なぜ、リスクの高い「強盗」が増えているのか。そして、「これ以上はまずい」と判断することもできないレベルの「素人犯罪者」に対してどう備えればいいのか。家で強盗と遭遇してしまった場合の対処法も考えたので、ぜひ自身でも想定してみてほしい。