人の上に立つと、やるべき仕事や責任が格段に増える。メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多く発生し、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」「やるべきことが多すぎないか…」と戸惑ってしまうだろう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「仕事ができる人」が24時間つねに考え続けていることを解説する。(構成/種岡 健)
「人が動くとき」
何が起こっているのか
仕事で24時間考えるべきこと。それは「仕組み化」です。
「仕組み化」と聞いて、まず想像するのは、ビジネスモデルの話でしょう。
商品やサービスをいかに生み出し、どうやって広げていけばいいのか。そういう戦略のことを想像するかもしれません。
しかし、私がお伝えしたいのは、ビジネスモデルの話ではありません。
あくまで「人」をどう動かすか、という本質的な話です。
ビジネスモデルは、ケーススタディになった瞬間に古びます。
どんなビジネスモデルであれ、結局、最後は「人」が重要になってきます。
1人1人が何に集中するのか。
どういう改善に取り組むのか。
その差が積み重なって、ビジネスはうまくいきます。
アイデアを「過大評価」する人
日本では、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏の成功論がよく語られます。
「想像力が大事で、いまここにないものを新たに妄想できるから、アップルは成功した。だから、枠にとらわれずに、自由な発想で仕事に臨まないと価値を生まない」
そのように称賛されます。
しかし、ここには、1つの要素が欠けています。
たしかに、ジョブズ氏は優れたアイデアを持っていました。
しかし、そのアイデアを実現させるためには、「言われたことを貫徹する」という徹底的な規律が必要です。
速やかに行動に移し、試行錯誤し、改善していく「組織」が大事です。
「アイデア」だけではなく、仕組み化された「組織」があって初めて、両輪となる。
それなのに、組織の話には華やかさがないためか、スポットライトが当たることがありません。
派手なアイデアや個人のカリスマ性ばかりに目がいってしまうのです。
「古い仕組み」を
「新しい仕組み」で壊す
「仕組み化」というのは、「ルールを決めて、ちゃんと運営する」ということです。
おそらく、「仕組み」や「ルール」という言葉を聞くと、ネガティブなイメージが先行するでしょう。
それは、あなたの会社に「理不尽なルール」だと感じているものが思い浮かぶからかもしれません。
「このルールは何のためにあるのだろう?」
と思ってしまう決まりが、きっと1つや2つはあるはずです。
「新入社員は、始業時間の30分前に来ましょう」
「電話は3コール以内に取りましょう」
「一般社員はエレベーターを使ってはいけません」
これらのルールがあったとして、なぜそれが生まれたのかについて想像力を働かせてみてください。
過去、何か問題が起こったとき、そのルールは作られたのでしょう。
そのときは必要だったのです。
ただ、そのときの「責任」を語るべき人が、いまはいません。
ルールが形骸化してしまい、そのまま残ってしまっている状態です。
誰かがその「責任」を引き受け、変えなくてはいけない。
本来、人の上に立つ人が、自らの責任で変えるべきです。
もしくは、「このルールがあることで、ある問題の発生を食い止めています」ということを組織全体に浸透させなくてはいけない。
ルールを正しく取り扱う仕組みがないから、「理不尽なルール」と思われてしまうのです。
仕組みの考えは、そうやって使われるべきです。
過去に作られて形骸化したルールを、もっと大きな仕組みの枠組みによってアップデートしていく。
その責任をとるべき人が、人の上に立つべきなのです。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)