脱炭素の実現に向けて国も企業も取り組んでいるものの、その実態は…。温室効果ガス排出量の算定に関して、「下請けいじめ」も発生しかねない状況とは?(未来調達研究所 坂口孝則)
経産省と環境省がガイド公表
背景にある企業の“残念な実態”とは
経済産業省と環境省の連名公表の「カーボンフットプリント ガイドライン」をご存じだろうか? 2023年3月の公表後、5月には「カーボンフットプリント 実践ガイド」も出た。重厚な内容であり、温室効果ガスの算定に取り組んでいるサプライチェーン関係者にとって、貴重な資料だ。
企業は現在、温室効果ガス(Greenhouse Gas、GHG)プロトコルに従ってScope1、2、3の温室効果ガス排出量の算定を進めている。おおまかに、Scope1は企業の工場などで燃料燃焼に伴って排出される分。Scope2は電気利用の間接排出分。Scope3がサプライヤーからの原材料調達等の分だ。
実は、多くの企業でScope3が大半を占める。つまり、自社分よりも外部調達に関わる排出量が多いのだ。企業活動は外部の取引先からモノを買って加工し、それを販売している。だから、自社の算定のみならず、取引先に調達品の排出量を計算してもらう必要がある。
なお、環境負荷を評価する手法には、ライフサイクルアセスメント(LCA)とカーボンフットプリント(CFP)の二つがある。LCAはGHGのみならず、NOxやSOxなど、他の排出物質も算定する。一方、CFPはGHGが中心だ。今般、CFPを主役にした文章が公表されたのは、なぜなのだろうか?