ダイキン工業は2023年度中に中国製部材がなくてもエアコンを生産できるようにサプライチェーンを再構築するという。加えて、半導体を自社設計・開発する方針で、コストをかけてでも中国リスクや他社依存リスクを排除しようと努めている。他方、日本企業の多くは経営陣と調達部門で「不毛な押し問答」を繰り広げがちだ。台湾有事が現実味を増す中、調達のリスクヘッジ策でよくある問題点は何か。「中途半端にやることこそ有害だ」と筆者は警報を鳴らす。(未来調達研究所 経営コンサルタント 坂口孝則)
ダイキンの中国リスクヘッジ
半導体の自社設計・開発も
報道によると、ダイキン工業は2023年度中に中国製部材がなくてもエアコンを生産できるようにサプライチェーンを再構築するという。中核機能部品を自社製造に切り替えるのに加えて、取引先にも中国以外の国での生産を依頼するそうだ。
ただ、注意したいのは、ダイキンの“全て”のエアコンが対象となっているわけではない。また、中国部材が“なくても”生産できるのであって、「脱・中国」ではない。
とはいえ、円安や地政学リスクの高まりもあって、一国集中のリスクを軽減する優れた動きと評価できる。完全に中国品を排除するのはコスト面でもデメリットが大きいだろうが、リスク軽減のために割合は減らすわけだ。
加えて、ダイキンは半導体を自社設計・開発する方針も明らかにしている。従来は半導体メーカーの標準品を使っていたが、省エネ性能を高められる特注品も活用していくそうだ。開発費用は数十億円を投じるもようで、生産自体は外部に製造を委託する。オリジナルの半導体を少量のみ使用する場合は調達面で不利になる(市場流通性がないため外から入手もできない)が、それなりの量を使用する場合は、製造委託先への価格交渉力が強くなるだろう。
地球温暖化の影響でエアコンの需要は高まる一方だ。半導体の設計ノウハウを外部に依存するのではなく、自社で有するメリットは大きい。ダイキンは、コストをかけてでも中国リスクや他社依存リスクを排除しようと努めている。