バブルの様相を呈している水素は、果たしてリーズナブルなのか。特集『1100兆円の水素バブル』(全8回)の#6では、世界で主流とされる水素の製造コスト、水素発電のコストを徹底検証した。そこで見えた不都合な真実とは。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
脱炭素社会の理想はグリーン水素
でも製造効率が非常に悪い
地球温暖化を食い止めるには、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の排出をゼロにする。CO2排出をゼロにするには、エネルギーを作るときも使うときもCO2を出さない。それが脱炭素社会の美しい理想である。
水素で言えば、CO2を排出しない再生可能エネルギーの電力を活用する「グリーン水素」が、最も美しいということだ。
しかし、あるエネルギー業界関係者は、「どれだけエネルギー効率の悪いことをしてまでグリーン水素を作るんですかね」と首を傾げる。
なぜグリーン水素の製造は、エネルギー効率が悪いのかを説明しよう。
エネルギーには分類がある。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料や、太陽光、風力など自然から直接採取されるものを「1次エネルギー」、1次エネルギーを加工、または転換することによって得られる電力や都市ガス、コークスなどを「2次エネルギー」とそれぞれ呼ぶ。
自動車をはじめ発電や船舶、航空機などの燃料として利用される水素は、1次エネルギーに近い。
ただし前述したグリーン水素は、1次エネルギーである太陽光や風力などの再エネを使って発電し、その電力を利用して製造する。順序がぐちゃぐちゃである。
まとめると、グリーン水素は製造するまでにエネルギーが1次、2次、1次と行ったり来たりするのだ。
エネルギーは1次から2次に転換する際に必ずロスが発生するため、1次、2次、1次と行ったり来たりすればロスが多くなって効率が悪くなるのは当たり前。それだけコストもかかるということだ。