「結婚なんてものは究極のプライベートで、芸人さんに出席してもらうのは違う」そう信じていた僕は、式を挙げることを誰にも言いませんでした。芸人はプロですから人前に出るだけでギャラが発生するわけで、無料で社員なんかのお祝いを言う時間があるなら、営業に行ったほうがメリットになります。仕事で縁がある自分が公私混同で利用するのは、良くないと考えていたんですね。
ところが結婚式の日、いったい誰に聞いたのか、ふらっとさんまくんが登場したんです。もう売れていて相当に忙しかっただろうに、たまたま仕事だったのか、そのために着替えてくれたのか、真っ白なタキシードを着て、さんまくんらしい温かくて笑えるお祝いの挨拶をしてくれました。
「顔を出してもらわへんのが、けじめや!」なんて意地になっていたくせに、彼の気持ちが僕にはすごくうれしくて、忘れられないものでした。
「披露宴に顔出してもろうた恩もあるし、さんまにだけは別れると報告しとこうか」
切り出したのはフジテレビの楽屋でしたから、『オレたちひょうきん族』の収録の合間だったでしょうか。
「俺、離婚しようと思うねんけど。どう思う?」