「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!
大卒日本人の生涯収入は男性で3億5000万円、女性で3億円程度
わたしたちは、金融資本を金融市場に、人的資本を労働市場に投資して、そこから利益を得ている。ゆたかになるためには、この2つの資本を効果的に活用しなければならない。
このときに重要なのは、「資本」の大きさだ。当然のことながら、大きな資本は大きな利益を生み、小さな資本からは小さな利益しか手に入らない。
それでは、あなたはどのくらいの人的資本をもっているのだろうか。不動産の理論価値は、将来にわたって得られる賃料の総額を一定の割引率で現在価値に変換して求めるが、人的資本も同様に、働くことによって生涯で得られる総収入を割り引いてその価値を計算する。
日本では、大卒で従業員1000人以上の大企業に勤めている場合、平均的な生涯収入は男性で約3億円、女性で約2億5000万円だ。これには退職金や定年後の再雇用の収入が含まれていないので、それを加えると、大卒日本人の生涯収入は男性で3億5000万円、女性で3億円程度になる。
現在価値への割引率は「市中金利+リスク」で求めるが、人的資本の場合、このリスクには病気で働けなくなったり、勤めていた会社が倒産してしまうなどの不慮の出来事が含まれる。だが生涯収入の大きさを考えれば、リスクをかなり保守的に見積もっても、大学を卒業した時点での(期待)人的資本が1億円を大幅に超えることは間違いない。
日本は「衰退途上国」と揶揄されるまで落ちぶれたが、それでもまだ世界3位の経済大国だ。わたしたちは“日本に生まれたという幸運”によって、発展途上国のひとたちから見れば巨額の人的資本をあらかじめ与えられている。いうまでもなく、これはとてつもない「特権」だ。
この大きな人的資本に対して、20代前半なら貯蓄額はほとんどが数十万円で、100万円を超える貯金があると友だちから驚かれるだろう。このように、大学卒業時点では人的資本は金融資本より100倍以上大きい。だとしたら、どちらの資本をより有効に活用すべきかは考えるまでもない。