休める社会を目指すためにできること

白河 日本の有給休暇の使われ方を見てみると、たいていは子どもの看病のためとか、ご自身が風邪をひいてなどで、結構な日数を消費している。でもそれは「シックリーブ(病気による休み)」であって、休暇ではないですよね。休暇は人としての尊厳を守るため、人間らしい時間を過ごして生きる活力を養うもの。家庭の用事をこなすものとは切り分けるという考え方が必要な時期に来ています。そしてそれを、国や企業が先導していかないと、なかなか変われません。

高崎 休みベタな方は、なんとか一度、まとまった休みの効用を体感していただけたらきっとハッとするんじゃないかと思います。国や企業を動かす方にこそ、それを体験してほしい。

白河 今、組織の中枢にいる方々は、昭和的な働き方を実現し、歯をくいしばって生産性を上げてきた世代。心身がタフで、それができたタイプの方々であることが多い。休みをどんどん取りなさいという気分にはならないのもよく分かるんです。未知の状況ですから、ためらいがあります。

高崎 企業にもそのような関門があると思いますが、ほかにも例えば私のようなフリーランスで働く人は、日本で休んだら収入ダウンに直結しますから難しいですよね。

 フランスでは、受給に当たって収入の制限はありますが、バカンス基金のようなものがあり、フリーランスで有給休暇がない人たちにはバカンスのための補助金が出る場合もあります。日本だと、例えば生活保護を受けている人にこう補助金を支給すると異論が出るかもしれません。休みはぜいたくだという感覚です。でも休みは権利なので、例えばウクライナの難民の子どもたちも、フランスでは支援を受けて夏のバカンスを過ごしています。徹底していますよね。

 また、会社員ではない方にとって、長期休暇から戻ってきたら仕事がなくなるのでは? という心理的なハードルもあるかもしれません。前後に仕事を調節することを良しとする風潮がもっと高まれば、休みやすくなるかなと思います。

白河 人々の意識から変化する必要があるし、それを成し遂げるためには国や企業が先導し、運用する仕組みや制度、マインドを整える必要があります。でも逆を言えば、それがそろえば、かつてのフランスが大変身を遂げたように日本もきっと大きく変われる。日本はすでにある先例を見て学ぶ、取り入れることにたけていますから、フランスよりももっと早く変われると期待しています。