大学医学部と付属病院の診療科、研究室ごとに組織される大学医局は、教授を頂点とした人事ヒエラルキーが形成されている。2004年に初期臨床研修制度が変わり、大学病院以外の就職先を選べるようになったことをきっかけに大学医局の衰退が始まったといわれる。特集『今なら目指せる! 医学部&医者』(全24回)の#11は、大学医局員による覆面座談会の前編。大学病院で働く若手・中堅医師4人が診療科選び、給料、そして働き方改革の内実を語る。(聞き手/フリーラス麻酔科医 筒井冨美、構成/ダイヤモンド編集部 野村聖子)
大学医局に残って内科を専攻
「ひどい目に遭いました」
──医師の大学病院離れが叫ばれて久しく、今や7割弱の医学生が、医学部卒業後の初期臨床研修先として大学病院以外を選択します。その上、2018年にリニューアルした専門医制度(初期研修2年の後、診療科・専門領域の「専門医」資格を取るための研修プログラム)で、内科専門医の要件が厳しくなり、内科に進む若手が激減しました。A先生とB先生は現行の専門医制度の第1期生。初期研修も出身大学の付属病院で、その上内科の専攻医(専門医研修をしている医師)に進むとは、今どき珍しいですね。なぜあえていばらの道を?
A医師 市中病院だとやはり我流の方が多いので、卒業後すぐだとそれが医学的に正しいのか判断できないですよね。やはり若いうちは、その分野の王道、本流をしっかり学べる環境を選びたかったんです。専門医制度については、診療科を選んだ当時、あまり深く考えていませんでした。父が開業している関係で、内科に行くことは決めていたんですが、結果、ひどい目に遭いました(笑)。
B医師 僕は実家から近かったのと、博士号のためです。うちの大学は初期(臨床)研修中に博士号を取れるプログラムがあったのが決め手でした。
──昔は医学博士を取るなら、大学院に進んで大学に授業料を払う上、無給で診療までさせられたけれど……。初期研修中ということは給料をもらいながら博士号を取れる?
B医師 はい、給料も出ます。特に珍しくはなくて、他にもやっている大学は結構ありますね。
──新型コロナウイルス対応は?
B医師 やりました。ある教授が「コロナ最前線の医師」として頻繁に地元メディアに出ていたんですが、実のところ、うちのコロナ最重症患者は、その教授の科じゃなくて救外(救急・外傷外科)が一気に引き受けていたんですよね。当の教授は、大学内で「いつも院内にいない」と言われていまして(笑)。メディアが取材に来るときだけ現れるという……。